国公立大の学費が今は随分とお高い
3月末に成立した2013年度税制改正法には、新たに「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が設けられている。これにより、祖父母が孫に与えるお金は、教育資金に限って1人当たり1500万円まで贈与税がかからなくなる(図表2:次ページに掲載)。13年4月から15年12月までの時限措置だ。
「従来の税制でも、必要な教育費・生活費なら祖父母が出す金額には贈与税はかかりません。ただ、たとえば教育費の名目で300万円渡しても、学校に100万円しか振り込まれなければ残額に課税されます」(同)。
図表1は孫4人と2億円の資産を持つ祖父母が、孫に贈与しなかった場合、孫1人だけに1500万円贈与した場合、孫2人に1500万円ずつ贈与した場合、孫4人に1000万円ずつ贈与した場合を試算したものだ。贈与額が大きくなるほど、納付すべき相続税額が減っていくことがわかる。
「煩雑な手続きが必要となるので、この差額を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれ。もっとも、両方の祖父母から1500万円ずつ計3000万円まで非課税となるのではなく、トータルで1500万円まで。しかも全額教育費として使い切らねばならず、物凄くメリットがあるとは言い難い」
高齢者層が抱え込んだ巨額の預貯金を、何とか市中に出回らせるための方策……という霞が関の思惑ばかりが目立つのは致し方あるまい。
「しかし、祖父母が亡くならないともらえない相続財産と違って、孫が今、まさに必要なときにもらえて学校に通えるという安心感は大きい」(同)
世代間のギャップからくる誤解が、無用の壁となっている場合もある。祖父母の学生時代と今とでは学費の実態がかなり違うことで、「国公立ならいいか」と思っていたりする。
「国公立大の学費が、今は随分とお高い。この20年で私立大との差が相当縮まっています。今、高校生を持つ親の世代は大学進学率が男女合わせて3割弱、祖父母の世代に至っては1割程度。学費について知らないうえに国公立は安いと思い込んでいます。都市部の国公立で学ぶほうが、地元の私大に通うより授業料も含めてずっと費用がかかるとわかって後悔する親御さんもいます。今どき、大学はどこも高いと思っておいたほうがいい」
時代が違うから、というエクスキューズは、親世代が心の負担を軽減するのにも具合がいいだろう。