たとえば価格を10%値下げしても、需要が逆に20%増えれば、「20 ÷(-10)×(-1)」で、価格弾力性は「2」となる。このように「1」より大きい場合は「価格弾力性が高い」といって、価格が下落したときに売り上げが増える。
逆に価格を10%値下げしたにもかかわらず、需要が5%しか伸びないと、「5 ÷(-10)×(-1)」で、価格弾力性は「2分の1」となる。そして「1」より低い場合には、「価格弾力性が低い」とみなされ、値下げしたのにもかかわらず、売り上げは増えないことになる。
そして、女性と男性を比べた場合、女性のほうが総じて価格変化への対応が大きいと思われる。それはデパートのバーゲンや、スーパーの安売りセールに女性のほうが敏感なことを見てもよくわかるだろう。だから、映画館の館主たちは無意識のうちに価格弾力性のグラフを頭の中に描き、メンズデーではなくてレディースデーを設定しているのだ。
それに平日にメンズデーを設けても、仕事で忙しいビジネスマンが多く、大した集客効果は見込めない。それだったらということで、わざわざ休日にメンズデーを設ける必要などないだろう。黙っていても観客が来てくれるからだ。
とくに奥さんや彼女に「あの映画面白かったわ」と聞けば、気になって映画館に足を運ぼうと考える男性諸氏が少なくないはず。カリスマ的に周囲への影響力の大きい人をマーケティングの世界では「インフルエンサー」と呼んでいるが、レディースデーはそのような力を期待したものともいえそうだ。
こう考えてくると、先にも触れたように、世の中に女性を優遇するサービスがなぜ多いのかがわかってくる。消費増税前の駆け込み需要の反動で、消費全体の落ち込みが懸念されているだけに、「逆差別」などと水を差すようなことは慎み、おおらかな目で見ることが大切だと納得しておくことにしよう。