いまでも、自動車会社を訪ねるときは、そこの新車を販売店で試乗してからいく。カーナビで取引していても、相手の本筋は車。会ったときに、車の話で盛り上がらない限り、気持ちが一緒にはなれない。一緒になれば、ときに「おたくのこの車、いいですね。でも、ここは改善の余地がありますよ」とも言う。そこから「どうすればいいか」「何ができるか」と、仮説の世界が始まる。
住宅をどうするかも、車に負けずに好きだ。自宅を新築した際は、間取りから庭に至るまで、すべて設計した。「これは、自分だけなのか」と思い、人に会うと「あなたの夢は何ですか」と問いかけ、もし「いい家に住みたい、いい車に乗りたい」との返事が返ってきたら、頷く。外国でも、同じ質問を重ねる。
もちろん、家と車の両方、という答えばかりではない。その国の所得水準や、家に対する概念の違いもある。でも、自分がこれだけ興味を持てるのだから、多くの人もそうではないか、との思いが根底にある。
つまり、事業を仕分けした4つの象限のうち「モビリティ」と「住宅空間」は「好き」という象限でもある。自動車は、自社がメーカーになる選択肢はまだないが、住宅はすでに3000億円規模の事業がある。4年後に5000億円、という目標も立てた。今後、海外展開、あるいは企業買収など、象限にまだ記入していない構想も、湧いてくる。
(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)