「象限思考」で練る事業の再仕分け

キーワードは「象限思考」。米国留学でコンピューターサイエンスを学んで、磨きがかかった。

象限は、円を4等分したり、縦軸と横軸で割ってできる4つの領域。まず、お客が実現したいことをつかむ、あるいは「こういうことを実現したいのではないか」と仮説を立てる。その絵を描いて、実現するためには組織やシステムをどう動かせばいいか。やらなければいけないテーマや課題を絞り出し、頭の中で4つの象限に当てはめていく。

この手法は、パナソニックのように事業分野が多く、大きな会社を見直すときには、欠かせない。2012年6月、社長に就任した翌日の全社向け朝会で「『お客様価値提案』の目指す方向」と題した図表を、スライドでみせた。左側に4つの象限を描き、全事業領域を「住宅空間」「非住宅空間」「モビリティ」「パーソナル」に分類した。映像・音響機器や白物家電といった、従来のメーカー側の分類ではなく、使う側を主役にした仕分け。そして、座標軸の原点に当たる中央部の円内には「お客様」。言うまでもない、すべての事業は「お客の役に立つため」にある、と強調するためだ。

就任が内定して4カ月、90あった事業単位の現場を回り、現状や課題を聞いた。知らないことも、多かった。事業を仕分け直すとき、別の基準も持った。「黒字か、赤字か。数年で儲かるようにできるのか、無理か」。でも、脆弱な事業単位があっても、よく稼いでいるところにくっつけることは、しない。それでは「守株之類」になってしまうし、組織というのは小さいほど、人手も足りないくらいほど、仕事も速いし成果も出る、と思うからだ。

大学2年のときに、親に自動車を買ってもらい、通学に使った。運転が好きで、よくドライブした。1年のときにダンスパーティーで知り合い、結婚した妻ともいった。カリフォルニアへ留学していた2年間は、米国車のオープンカー。どちらかといえば「過激な車」が好きだ。