訓練で有能なリーダーをつくることは可能ですか。それとも、最高のリーダーは生まれつきの資質によるものだと思われますか。(ブラジル、ブラジリア 運送会社取締役)
リーダーシップの特質のなかには、たしかに天性のものもあり、それらは大きなウエートを占めていて、きわめて重要です。それに対し、リーダーシップの2つの主要な特質は、訓練と経験で磨くことができます。というよりも、磨く必要があります。
リーダーシップは5つの重要な特質で構成されています。ちなみに、これらの特質には、あらゆるリーダーシップ・ポジションに欠かせない誠実さや、今日の複雑なグローバル市場でのゲームには同じく欠かせない知力は含まれていません。もう1つの必須要件である感情面の成熟もやはり含まれていません。この3つの特性は(リーダーには)当然備わっているものだからです。
私たちの経験から言うと、リーダーシップの1つ目の重要な特質は、前向きなエネルギー、好調時にも不調時にも健全な活力と楽観的な姿勢でどんどん突き進んでいく能力です。2つ目は、他の人々に活力を与え、彼らの前向きなエネルギーを引き出す能力です。3つ目の特質は気迫。厳しい要求を突きつける能力、「イエス」「ノー」をはっきり言う能力です。4つ目の特質は、実行力、つまり物事をやり遂げる能力です。最後の5つ目を挙げると、リーダーは情熱を持ち、すべてのことに深い関心を持ち、精力的に働き、自分のすることの価値を信じています。
前向きなエネルギーと人に活力を与える能力はかなり強く関連しています。この2つは基本的には個性です。また、情熱は先天的なものです。熱い思いと好奇心に満ち満ちて生まれてきたような人がいるもので、彼らは生まれながらに人間を愛し、人生を愛し、仕事を愛しています。
しかし、気迫と実行力は違います。
新規採用者で、これら2つの特質がすでに磨かれている人はめったにいませんし、ミドル・マネジャーでさえ、この2つは訓練で向上させることができます。しかし、最も優れた教師は実戦です。それは、気迫と実行力が主として自信から生まれるものだからです。
「イエス」「ノー」をはっきり言うことは、それを何度も経験して、決然たる姿勢がどれほど有効かを実感していれば、そうでない場合よりはるかにうまくできます。同様に、迅速に行動すること、説明責任を負わせること、結果に報いることの大切さも現実の挑戦のなかで初めて実感できるのです。実行しないことがどれほどマイナスになるかも経験することで思い知るのであり、ほとんどの有能なリーダーは二度とその間違いはおかしません。
リーダーは生まれつきか、つくられるのか――答えは両方です。
あなたがとるべき最善の戦略は、エネルギーと人に活力を与える能力と情熱を持っている人を採用することです。そして、気迫と実行力を訓練し、高めることに全力を注ぎなさい。5つの特質のすべてを十分備えている人を昇進させなさい。すべての人間がリーダーになるよう生まれついているわけではありません。しかし、あなた自身がリーダーであるかぎり――あなたは実際にそうですが――リーダーになるよう生まれついた人々を見つけ、育てるのはあなたの責任です。