商品価値に見合った価格づけで「1斤250円」

同社では、それ以前にも、オリジナルの食パンをつくっていた。が、不況期だったこともあり、消費者からは値頃感が求められていると考え、低価格訴求型の商品を提供していた。無論、十分な成果は得られなかった。ところが、2012年になり、敷島製パンがパスコ・スペシャル・セレクションという商品を世に出し、価値訴求型の商品が105%も伸びるという事実をつかんだ。また、野村総研の「生活者1万人アンケート調査」を精査し、「安くて経済的なものが欲しい」という消費者のニーズが経年的に低下していることを知った。逆に、「多少値段が高くとも品質のいいもの、おいしいものが欲しい」という消費者のニーズが着実に上昇してきていることを確認した。

このような実体経済の変化動向を把握し、オリジナル商品の開発において価値訴求へと新たな舵取りの方向が決まったのだ。

実際のオリジナル商品の開発プロセスにおいては、まず最強の布陣となるようなチームメンバーの選定が行われる。商品開発のチームリーダーが決まると、その人物を中心に、原材料、包装資材、製造設備などそれぞれの分野のエキスパートに、当該商品をつくるのに最適、最強のメンバーが一体誰なのかを問いかけ、チームの編成がなされていく。

そして、それ以降の商品の開発過程に関して、中村氏はこう説明する。「われわれのチームマーチャンダイジング・プロセスというのは、1商品をつくるのに25週間ほどかかります。これをカリキュラムというのですが、外部情報と内部情報を含めて整理し、お客様が求めているものは何なのかを見極め、コンセプトワークをなし、目標品質を定めるのです」。

こうして例えば食パンなら、商品のテースト、食感、風味などが練り上げられていく。このプロセスで、同社の開発室の引き出しの中に入っている原材料でつくれないものだったら、つくれる原料を探しにいくし、既存の製造設備でつくれない工程もしくは実現できない品質があれば、どういう設備に変更したらよいのか、といったことをとことんまで追求する。実際、パンに弾力感を出すため、コストも時間もかかる独自の手ごねのプロセスまで導入している。