このようなプレミアムタイプの商品をつくり始めた当初、既存メーカーから、厳しい意見が多数寄せられたという。同社では年2回、全国1万6000店の加盟店オーナー、従業員らを集め、商品政策や売り場計画について説明し、ともに勉強する場を設けている。昨年4月、「金の食パン」をはじめてその場にお披露目した際に、取引先のメーカーも来場していた東京会場で、メーカーの多くが「みんな1回はやりたいと思うんですよね。こういう高級パンを。ただなかなか続かないので1カ月以上売り場に残り続けたら拍手しますよ」と揶揄されたという。明らかに小売り主導の商品開発を軽視したメーカーの上から目線の意見だ。
ところがセブン&アイグループには確固たる勝算があった。それは事前のテストで高成果を得られていたからである。同社のデータに基づく仮説検証、そしてそこから導かれる戦略提案の的確さは有名だが、その姿勢はセブンゴールドの開発にもいかんなく発揮されていた。
この商品の開発においては、まずマーケットの全体を把握した。パンを例にとると、日本のトータルのマーケットでは、菓子パンと惣菜パンのような味付け系カテゴリーと、食パンとロールパンのような主食系カテゴリーとは、その規模がだいたい拮抗している。民間の経済研究所の統計調査やDONQ、アンデルセンなどの専門店でも食パンがよく売れ、拮抗している事実をつかんでいた。ところがセブン-イレブンでは、食パン、ロールパンのシェアは著しく低く、調査時点ではあと4倍ぐらい売れてもおかしくないほどの低水準だった。このような実態を踏まえ、戦略対象を「食パンにしよう」ということになったという。