診療室での会話が、第三者に筒抜けになる世界

医療情報の二次利用とは、診療で生じたデータをその患者さんの治療やケアのために使用する(一次利用)のではなく、新薬開発、研究、AI開発、政策といった異なる目的に改めて使うことを指します。

つまり、あなたのために主治医が使うのが一次利用、あなたから生じたデータを集めて将来の患者さんのために、あなたとは面識のない研究者や企業が使うのが二次利用、と言えばわかりやすいでしょうか。

私は今年の6月、以下のような問いかけから始まる論考をプレジデントオンラインに寄稿しました。

皆さんは、診察室というなかば「密室」の空間で、信頼した医師にご自身の健康上の問題や生活の事情などを心を開いて相談するときに、その内容が「医療情報」として、他のまったく知らない第三者に伝わる可能性があるかもしれない、と考えたことがあるでしょうか。

本稿では、この6月の論考を踏まえつつ、今後急速に議論が進められると思われる医療情報の二次利用について、どのように促し、どのように縛っていくべきか――医療情報の利活用と私たちの権利保護のバランスについて論じてみたいと思います。

問診
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そもそもなぜ医療データが必要なのか

医療情報をいかに私たちの健康に役立てていくかを考えることは非常に重要です。

とくに一次利用については、治療や療養、健康維持や疾病予防に直結するので、その重要性についてはあらためて述べる必要はないでしょう。

一方の二次利用については少し説明が必要かもしれません。

内閣府の「とりまとめ」の冒頭では、二次利用のメリットについて以下のように述べられています。

研究者や企業等のデータの分析を複雑な手続きなく可能とし、治療と結果の因果関係等の分析につながるようにすることにより、有効な治療法・医薬品・医療機器等の研究開発、効果的・効率的な医療提供体制の構築、予防や健康医療政策への反映、社会保障制度の持続可能性の確保及び国民負担の軽減への貢献等に資するようにすることが重要である

重複処方・検査等の適正化、健診の受診率などは、ひとつの医療機関のカルテ情報からだけでは把握できませんし、薬剤と有害事象の関連といった薬剤安全対策の監視も同様に多施設から集められたデータが不可欠です。

診療についても、多くの患者さんの受療行動をもとにしたデータを解析することで診療ガイドラインの改良にもつながります。

また小児がんや希少疾患などそもそもデータが少ない疾患の治療については、ひとつでも多くのデータをかき集める必要があります。これは他の二次利用による「効率化」のメリットとは異なり、患者さんの選択肢を増やすものとなりますから、医療関係者でなくともうなずけることと思います。