明記された「二次利用リスク」

一方、二次利用のデメリットについても理解を深めておく必要がありますが、じつは、とりまとめ自体が二次利用におけるリスクをすでに認識しています。

特定の個人又は集団に不利益となる決定への利用、雇用・商品・役務・保険契約・信用契約等で特定の個人又は集団に不当な差別となる決定への利用、特定の商品・役務の広告・宣伝への利用、個人・公衆衛生・社会全体に害を及ぼすおそれのある商品・役務の開発への利用は認めない

とりまとめは、このように明記しているのです。

「○○の利用は認めない」

――一見、安心が担保されるように思えてしまいますが、禁止しなければならないとわざわざ書くのは、それが現実に起こり得ると政府自身が認めている証左とも言えましょう。

また当然ながら、禁止を列挙することと、禁止が守られることは別です。医療データの不適切利用を、どのような手段で禁じようとしているのでしょうか。

まず、事業者側への規律は比較的丁寧に言及されています。

認定事業者と利用者への安全管理措置、定期的な外部監査、再識別の禁止、第三者提供の制限、安全な解析環境への限定、違反時の認定取消や罰則。これらは当然のことと言えるでしょう。

また個人が意図せず特定された場合には、利用者から制度への報告、該当データの利用停止といった対応も定められています。

引き出しに入ったカルテ
写真=iStock.com/wakila
※写真はイメージです

情報提供の「拒否権」がない場合も

しかし、これらの規律は、いずれも「事業者を監視する」ための設計です。

漏えいや目的外利用を検知したとき、その事実は本人に届くのか。被害を受けた人が何を請求できるのか。外に出たデータを戻す手立てはあるのか。ここが担保されていないのです。

本人の関与も、置き去りにされているように思えます。

事前通知を廃して残されるのは「拒否の申し出」(オプトアウト)ですが、これには“ただし書き”が付きます。

拒否の権利を行使する前に審査委員会で承認された利活用には、拒否の効力がおよばないとされているのです。

知ったときには、すでに使われている。

それがこの新たに作られようとしている制度の実像です。

しかも収集対象は、格段に広がる方向となります。

遺族が停止を求めなければ、死亡者の医療情報も利活用の対象となり、ゲノムや画像といった個人識別符号に該当する情報も、加工せずに利活用する道が示されているのです。