『パンダの親指』 スティーヴン・ジェイ・グールド著 ハヤカワ文庫

生物は少しずつ着実に進化すると考えられていた。最近は酸素濃度の変化が進化をもたらすという説もある。グールドは進化は突然起こるという「断続平衡説」を唱えた。蝶の羽は徐々に美しくなったのではなく、いきなり完全な形で出現するというのだ。突然変異は体内で継続的に積み重ねられる。それが「閾値」を超えたときに最適なものが出現し、その形質がパッと広がる。

この生物進化とヒット商品誕生の仕組みは似ていると思う。無駄な努力というものはない。ただし成果として表れるには時間がかかる。不断の努力を積み重ね、それがある「閾値」を超えたときにヒット商品となる。基礎研究の継続がいかに大事か、実感させられた一冊だ。

(村田製作所会長 村田泰隆)