サラリーマン経営者では太刀打ちできない

SPEEDとSCALEで他を圧倒するモデルだから先行商品があって、開発の方向性がわかっているときは強い。日本の企業がモタモタと会議を繰り返して意思決定に時間をかけている間に、さっさと開発にGOが出て、マーケティングと広告戦略も決めて、市場を支配していく。そのトップダウンのスピードとスケールたるや、日本のサラリーマン経営者企業では太刀打ちできない。

腕時計型端末「ギャラクシーギア」を発表するサムスン電子のIT&モバイル部門担当のCEO。(AP/AFLO=写真)

そうした意思決定を可能にしたのは、李健熙というカリスマ経営者の存在である。

サムスングループ創業者の三男で2代目会長である李健熙氏は、経営の天才であり、強烈なまでの権力志向と独裁的な意思決定で知られている。ハッキリ言えば、彼の独裁型経営が先鋭化して、いままで当たりに当たってきたのだ。

しかし世界最大の家電・ITメーカーになった今日、追従すべき先行者を見つけるのは困難だし、今年72歳になった李健熙会長の後継問題も、今後は浮上してくる。

李健熙会長のような独裁型のカリスマの後で、同じような経営が引き継がれるケースは稀だ。かといって社内体制を民主化した場合には、日本の家電メーカーが陥っているように意思決定が遅くなるし、インパクトにも欠けてくる。

カリスマ経営者の才覚に頼ってきたサムスン電子と、そのサムスン電子に頼り切ってきた韓国経済は、次なる成長エンジンを見いだすことができるのだろうか。