伝統的なもののすぐ隣に現代生活がある
同じくロンドンの有名博物館で、日本美術のギャラリーのキュレーションを担当している有識者は、「日本は1000年以上続く工芸技法が数多く残っている国です。何世紀も続いている文化が、日本の現在の生活やデザインにどう生かされているのかに興味を持つ人は多いです。イギリスは産業革命の影響で、多くの伝統工芸が一度途絶えました。残っているものはアーツ・アンド・クラフト運動の影響で価値を再認識され、復興されたものなのです」と話す。
五重塔や神社仏閣が並ぶ京都や、富士山が見えるレトロな雰囲気の旧東海道など、古く伝統的な町並みが残る地域の人気は高い。
オーストラリアやアメリカ、シンガポールといった若い国はもちろん、長い歴史を持つ国の人々にとっても、見るに値するユニークなもののようだ。そういった伝統的なもののすぐ隣に、ユニクロや無印良品といった世界的で現代的なアパレルブランド、自国に似た現代生活がある。
さらに、世界に広がる漫画やアニメ、ゲームなどのPOPカルチャー、街中の大型ビジョンに投影された3D映像などによって、未来的な印象を抱くことも多い。
先に紹介した日本美術のギャラリーのキュレーターは、東京都が観光振興のスローガンとしている「Old meets New」というシンプルなコンセプトを評価して、次のように語る。
「浮世絵×ドラえもん」が融合できる強み
「日本は、新しいものと古いものが共存していて、ただ伝統を守っているということではなく、伝統を新しい形で更新しているところが強みです。日本美術の中でも海外によく知られ、人気があるのが葛飾北斎による富嶽三十六景《神奈川沖浪裏》などの浮世絵です。浮世絵は江戸時代に発展したものですが、ファッションデザイナーの山本耀司が服飾に取り入れたり、ドラえもんやポケモンが浮世絵とコラボレーションした商品が販売されていますよね」
もちろんヨーロッパでも教会の隣にITスタートアップ拠点があるなど、古さと新しさは同居している。
しかし、欧米の外国人旅行者にとって教会は背景化しやすいのに対し、鳥居や賽銭箱、神社の境内は外国人にとって見慣れないものとして目につきやすい。その既知と未知のギャップが「伝統と未来が息づく国」を感じさせているのだろう。

