入り口を間違えるとメンバーは心を閉ざす
メンバーの変化に気づけるようになると、今度は別の難しさが出てきます。それは、「気づいたことをどう伝えるか?」です。変化に気づいたら、つい確かめたくなります。
私「元気がないけど、何かあった?」
メンバー「いえ、別に……」
こう返されると、こちらも次の言葉に詰まります。けれどメンバーにしてみれば、急に切り込まれたために身がまえただけなのかもしれません。せっかく変化に気づいても、伝え方1つでメンバーは心を閉ざしてしまうのです。
そんなときは、「変化の原因を見抜く」のではなく「変化に気づいているよ」とそっと伝える姿勢で臨みましょう。そう、「あなたのことを気にかけている」ということが伝わればいいのです。
・「どうしたの?」より「無理してない?」
・原因を問うより、ねぎらいの言葉をかける
言い方を少し変えるだけで、メンバーの受け取り方は大きく変わります。
私「最近ちょっと忙しそうだね。無理してない?」
メンバー「実は、少し抱えすぎていて……」
問い詰められれば守りたくなり、気にかけてもらえれば話したくなる。同じ場面でも、入り口が変われば出てくる言葉が変わります。
大切なのは、メンバーに「ちゃんと見てもらえている」と感じてもらうこと。それが伝わったとき、人は初めて本音を話してくれます。
観察は、メンバーを分析するためのものではありません。メンバーを気づかうための入り口です。そう捉え直すと、声のかけ方は自然と変わっていくに違いありません。
特に問題はないのに、関係が深まらない
先の記事では、自分の内面を開示することで関係の土台をつくる話をしました。本稿では、もっと小さな日常の場面での関わりが、実はその土台を支えているということをお伝えします。
正直に言うと、以前の私は「仕事で結果を出せば関係は自然にできる」と考えていました。
私「おはよう」
メンバー「おはようございます」
最低限のやりとりはしていました。しかし、それ以上の関わりはほとんどしていなかったのです。その結果、少しずつ壁のようなものができてきました。
・相談に来ない
・雑談が生まれない
・結果として、距離が縮まらない
「特に問題はないのに、関係が深まらない」という状態が続いていたのです。そこで私はあるとき、思いきって自分の意識を変えることにしました。
私「昨日の資料、よかったよ」
メンバー「ありがとうございます」
私「最近、忙しそうだけど大丈夫?」
メンバー「少し立て込んでいます」
このように、相手に関することを取り上げた言葉かけをすることで、少しずつ会話が増えていきました。関係は特別な場ではなく、日常のやりとりでつくられるということです。大きなことをする必要はありません。小さな声かけの習慣が、関係を変えていくのです。

