日本で「安楽死」は禁止されていない

「外国で認められている安楽死が、なぜ日本では……」という質問には、さらに間違いがあります。そう、日本では安楽死は禁止されてはいないのです。

そう言うとびっくりする人がいるかもしれません。「だって、安楽死を行って警察に捕まった医師がいるし……」などと思って。しばらく前にも、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性を2人の医師が安楽死させた事件がありました。

病院の廊下を歩く医師
写真=iStock.com/hxdbzxy
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いや、正確に言えばそうではないのです。ここが大事なところ。このお医者さんたちは、安楽死をしたから捕まったのではなくて、殺人をしたから捕まったのです。

彼らはこの殺人が「安楽死だ」と主張しました。しかし、それは安楽死などではないことが明らかになりました。

そうすると残るのは? そう、彼らが人を殺したという事実だけです(ちなみに、安楽死のつもりでやって、起訴されなかったケースもあります。例えば「京北病院事件」でググってください。これはこれで興味深いケースです)。

「安楽死が禁止されている」と言うときに引き合いに出されるのは刑法202条。自殺幇助ほうじょと嘱託殺人はここで禁じられています。

しかし、安楽死そのものは法的規定がないのです。だから、法的に禁じられているも認められているもないというのが正確です。

安楽死の法制化は「はっきりさせたいから」

もう1つ言えば、たしかに安楽死を認めている国もありますが、それも決して多くないということです。逆に、禁止している国は多くあります。だから、さっきの疑問はなおさら変です。

「なぜ多くの国で禁止されている安楽死を、日本でわざわざ法律にしようとするのか?」という方が疑問にならないといけません。もちろんそれには理由があります。大きく言って、2つ。

(a)1つには、はっきりさせたいから。今は安楽死は法的にグレーな状態。倫理的な基準を考えることはできるし、判例もある。だからきちんとやれば安楽死として認められるかもしれないとはいえ、こういう状態を不安に思う人もいます。

だから患者が望んだとしても、医者が「それはできない」と断ることもある。他方では、「患者のためになるんだったら、やってあげたいと思うけど、自分が殺人者にはなりたくないし」というので躊躇ためらうお医者さんもいるでしょう。

だから法律を作れば、迷っているお医者さんが引き受けやすくなります。