かつてアマテラスは宮中で祀られていた

〈崇神天皇六年、人民は流亡離散し、なかには国に反逆をはたらく者もあらわれ、天皇の徳をもってしても治めることが難しくなった。

これ以前から天皇はアマテラスとヤマトノオオクニタマ(倭大国魂神/大和地方の土地神)を宮殿(磯城瑞籬宮しきのみずかきのみや)の中で祀っていたが、その神威を恐れて、二神とともに住むことを不安に思うようになった。

そこで天皇はアマテラスを皇女トヨスキイリビメ(豊鍬入姫命)に託して笠縫邑かさぬいのむら(奈良県桜井市三輪の檜原ひばら神社付近とされる)に遷し祀り、そこには堅固な神籬ひもろぎがもうけられた。

ヤマトノオオクニタマは、もうひとりの皇女ヌナキノイリビメ(渟名城入姫命)に託して祀らせた。しかしヌナキノイリビメは体が衰弱してしまったため、祀ることができなかった〉

神話に描かれた「同床共殿」の命令

この記事にもとづけば、従来、歴代天皇は、神社ではなく宮殿(皇居)の中で皇祖神アマテラスを祀っていた。これを「同床共殿どうしょうきょうでん」と言い、具体的には、アマテラスの御霊代みたましろである八咫鏡やたのかがみを宮中に奉安し、天皇が直接、祭祀することをさす。

その由来は『日本書紀』の神話部分(神代巻)に明記されていて、そこでは、高天原たかまのはらのアマテラスが、地上世界に降臨しようとする御子神のアマノオシホミミ(天忍穂耳尊)に対して、「床を同じくし、殿舎を共にして、八咫鏡を祀りなさい」と命じている(神代下・第九段一書あるふみ第二)。

結果的に地上に降臨するのはアマノオシホミミの御子神のニニギ(瓊瓊杵尊)になるのだが、このニニギの曾孫にあたるのが初代神武じんむ天皇である。