「憧れの存在」か、「身近な存在」か
【シュシャン】のちに「アスピレーショナル(憧れ)&アクセシブル(身近)」という戦略を掲げることになりますが、これは当時からイメージしていたことです。
ゴディバが、高級チョコレートとして憧れを持ってもらえるブランドであることは間違いなかった。実際、周囲の友人たちに聞いても、そうでした。ところが、「贈り物としてあげたりもらったりすることはあるけれど、自分のために買ったことはない」と言うのです。
理由を聞いてみると、高級感がありすぎて、自分のために買うには店に入りづらい、と。そのとき、憧れを持ってもらえる部分はそのままに、「お客様にもっとゴディバに気軽に近づいていただけるような取り組みをすればよいのではないか」と考えました。
ただ、正直社内にはこのアプローチに反対する声もありました。
――実際には、その戦略が正しかったことがのちにわかるわけですが、どんな反対があったのでしょうか?
【シュシャン】私は、入社後すぐにその提案を社員にしているのですが、彼らの意見は2つに分かれました。「ゴディバは高級ブランドの洋服やジュエリーのように憧れの存在であるべきだ」というものと、「もっと親しみやすく、現代の人々のライフスタイルに寄り添う身近な存在にするべきだ」というものでした。
現状維持は楽だけど変化がない
前者の人たちは、気軽に買えるようにしてしまうと、ブランドのイメージが毀損されてしまうと考えたのでしょう。実際、その考え方でゴディバは安定していたわけです。でも、成長はできていなかった。だとすれば、変えなければいけないですよね。
仕事をしていると、どうしてもいつも同じことばかりやろうとしてしまうものです。それでそれなりの結果が出ているのであれば、このままでいいじゃないかと思ってしまう。商品のラインナップも、広告の出し方も、パッケージの作り方も、店舗の出店も同じようにやろうとする。
人間は無難を求めてしまうものです。そのほうが楽だから。そして、リスクもないからです。でも、これだと新しい発見もなければ、エキサイティングにもならない。新しいチャレンジをしていかないと、変化は起きません。インプットを変えないと、アウトプットは変わることがないのです。
私はエキサイティングでいたい。そうでなければ飽きてしまいます。そこで、「無難に進めたい」、「変化は怖い」という考え方から、「エキサイティングを楽しもう」と会社全体を変えていきました。

