「V」判定なら軍隊に行かないはずが…

複数の疾患が併存する場合、まず個々の疾患についての適格性を判断し、最も制限の大きいものが同人の最終的な適格性となる、との情報がインターネット上に散見される。しかし、規程第1章(総則)第5条によれば、軍事医療委員会の出席委員の単純公開多数決によって結論が下される。

図表2は、法第23条・24条・33条の規定に基づく、適格性と軍務との対応表である。V判定(適格制限)になれば、平時であれば召集が免除され予備役に編入される。有事の際、V判定者を含む予備役は出頭義務を有するが、改めて行われる健康診断でV判定が出れば、召集免除となる。契約兵についても、平時はA(適格)・B(軽微な制限付き適格)のみが軍務に就けるが、有事にはV判定者の一部も入隊可となるのが徴募兵との大きな違いである。

ただしその際、持病が「除外リスト」に載っている35種類の疾患に該当しないことが条件となる。なお、G判定(一時的不適格)は、平時は1年、有事は半年間の猶予が与えられて判定が保留されるに過ぎない。

【図表】適格性と軍務との対応表

従って、徴兵を回避するには、いかにVまたはD判定を獲得するかが重要となる。一方、当局としては、少なくともV、できればB判定以上の者をより多く確保したい。このせめぎ合いが表面化したのが、「ウクライナ戦争始まって以来の大改正」と言われる、2025年8月の規程改正による適格性判定基準の大幅な緩和であり、再動員が取り沙汰されるもう一つの前兆である。

整列する兵士たちの足元
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糖尿病・肥満・高血圧持ちも動員する事態

2025年の改正では、88のうち半数近い42カテゴリーについて大小の修正が加えられた。その全貌を限られた紙幅で解説するのは複雑に過ぎるが、注目点は以下である。

●Ⅲ群に的を絞った質・量の両面での適格性緩和
・25カテゴリーでⅢ群の適格性を緩和し(Ⅰ群・Ⅱ群は19カテゴリー)、その大部分で適格(A)または軽微な制限付き適格(B)の範囲を拡大

●適格性が緩和された主な疾患
・高血圧、肥満、糖尿病、肝硬変
・アトピー性皮膚炎、梅毒、慢性前立腺炎、大動脈以外の動脈瘤
・機能障害が重くない(神経疾患、一部の手術後、片腎、心血管近傍の異物、下肢骨関節無腐性壊死など)
・治療が有効(心臓カテーテル後、内分泌臓器の術後ホルモン補充療法中など)
・生活上大きな支障がない(統合失調症、アルコール依存・麻薬/薬物中毒など)
・状態が未固定(一時的胃瘻・人工肛門など)
・治療拒否(悪性新生物・上下肢骨折後の金属固定具摘出)

●対象疾患リストから除外=そもそも適格性審査の対象にならない疾患の拡大
・検査正常の軽症気管支喘息、一部の末梢神経障害、根治した皮膚基底細胞がん、節外性リンパ腫、サルコイドーシス(I期)、過長包皮、嵌頓包茎

これにより、約1.4億人の全ロシア国民のうち、1割から3割に及ぶ糖尿病・肥満・高血圧などの生活習慣病患者をはじめ、従軍可能な年齢の男性に限っても数十万人が、より制限の小さい適格性に移行し、潜在戦力として新たにプールされることになった。