マレーシア首相も“待った”…工事が休眠状態に
さらに、マレーシア側でも圧力がかかった。翌2018年、総選挙での政権交代で首相に復帰したマハティール・モハマド氏は、フォレストシティの住宅を外国人に売らせないと明言する。中国人の購入者数千人が定住してマレーシア国籍を取得し、選挙で投票できるようになることを懸念した。
加えて、新型コロナウイルスのパンデミックで国境が事実上閉鎖されたことで、購入者を空路で呼び寄せる販売手法も成り立たなくなった。
そうした中、中国では不動産大手・恒大集団の経営破綻を機に危機が業界全体へ広がり、碧桂園も財政難に陥る。カタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラは、2023年時点の同社の負債が1860億ドル(約29兆8000億円)に達したと報じている。
結果、フォレストシティの建設工事は休眠状態となった。BBCによると当初計画のうち、現在までに完成したのは15〜20%にすぎない。サウスチャイナ・モーニングポストによると、4つの人工島を築くはずが、埋め立てが済んだのは1島だけで、実際に街の体裁が整っているのは約3平方キロメートルにとどまる。
街を人間らしくする出稼ぎ労働者たち
もちろん、島が完全に廃墟化したわけではない。
日が沈むと、海沿いの遊歩道は活気づく。ベンチに腰かけるのは警備員や造園業者、建設作業員といった出稼ぎ労働者たちだ。湾の対岸に輝くシンガポールの明かりを、彼らは眺めている。
酒の瓶が手から手へと回され、ベンガル語とヒンディー語、インドネシア語が混ざり合って会話が響く。現地を訪れたブルームバーグの記者が2023年、こうした夜の光景を伝えた。
遊歩道に集う人々には一部、この街の住人の姿も見られる。インド人のレンガ職人2人は、近くの超高層マンションに住むと語った。免税店からギネスビールを3ケース運んできたバングラデシュ人は、レンガ職人たちの数棟先に住むという。
コロナ禍で静まりかえっていた時代も、こうした国際色豊かな人々がここで暮らし、働き、街に人間らしい色彩を加えてきた。
とはいえ、やはり街全体として寂れた感は否めない。空き店舗が大半を占めるモールで、まばらな人影が向かうのは唯一繁盛している業種、免税の酒類店だけだ。
酒の免税店はフォレストシティの優遇税制によって実現している。酒税の水準が世界有数に高いマレーシアにおいて、大きな集客材料になっている。

