「夢の楽園」は詐欺拠点になった

やがて、招かれざる者たちが空き部屋に巣食うようになった。

今年7月中旬、マレーシア警察はフォレストシティ内の32カ所を家宅捜索し、中国籍を中心に335人を逮捕した。ブルームバーグが報じた。

警察によると、2つの組織が住宅タワー1棟の5フロアにまたがる27戸と、バンガロー5棟を拠点に、仮想通貨の投資の勧誘やロマンス詐欺を働いていたとみられる。空室のはずの住戸は、パソコン313台、携帯電話1557台などで埋め尽くされていた。

この街で不動産を売るケビン氏(仮名)はBBCの取材に、会社からは顧客に「すでに2万3000人が住んでいる」と伝えるよう指示されているが、実際の住民は5000人にも満たないと明かした。

詐欺グループが人の少なさに目をつけたとみて、「彼らしかおらず、匿名性を確保できる。ここには誰も来ない」とも続けた。

フォレスト・シティのマップ。2019年6月撮影
フォレストシティのマップ。2019年6月撮影(写真=Jonashtand/CC-BY-SA 4.0/Wikimedia Commons)

“税率0%”でも、不便すぎて人が来ない

マレーシア政府も、事態を放置していたわけではない。摘発より前から、この街を立て直そうという取り組みはあった。

2024年9月、マレーシア政府はフォレストシティを「特別金融区」に指定したと、サウスチャイナ・モーニングポストが報じた。優遇税制で金融事業を呼び込む試みだ。特定の富裕層一族の資産を一手に引き受けて管理する「ファミリーオフィス」を誘致するため、税率は0%に設定された。

ところが、同紙によると、2026年夏までに条件付き承認を受けたのは6家族にとどまり、運用資産の見込み額は4億リンギット(約160億円)程度にすぎない。

政府は運用資産を年末までに20億リンギット(約800億円)へ引き上げる目標を掲げるが、達成しても当初の開発計画1000億ドル(約16兆円)の1%にも満たない。

なぜ衰退は止まらないのか。致命傷となったのが、人工島ならではの不便さだ。2025年2月、子供を就学させようと広州から移り住んだルイス・リー氏(35)は、島内にスーパーマーケットがなく、コンビニに置いていない食料品を買うにも車で出るしかないうえ、ショッピングセンターまでは30〜40キロ走る必要があると同紙に語った。

リー氏は「ここに定住する人がいなかったので、どの店も営業を続けられなかった」とも話しており、人口不足と店舗の衰退が繰り返す悪循環となっている。