当初は中国人富裕層で賑わったが…
当初、その想定は的中したかに見えた。
正式オープンに先立つ2015年12月に販売が始まると、購入希望者が殺到した。乗客を乗せたバスが毎日、シンガポールから国境を越えてやってきた。販売ホールには1000人を超える不動産エージェントが詰めていたが、それでも客をさばききれないほどだった。
「まるで、中国にいるようだった」
不動産コンサルティング会社KGVインターナショナルのリサーチ責任者、タン・ウィー・ティアム氏は、押し寄せる買い手でごった返す現地の様子について、米国際政治誌のフォーリン・ポリシーの取材にこう振り返っている。
その多くは、住戸の完成前から代金を支払う「プレセール」の形が取られた。購入者の多くが求めたのは、本拠としての居住ではなかった。投資用不動産や別荘として、あるいは対岸のシンガポールの学校へ通う子供が住めるようにとの目的だった。
不動産大手ナイトフランクでアジア太平洋の調査を統括するクリスティン・リー氏は同誌の取材に、中国で1戸買えばフォレストシティの物件が1戸無償で付いてくるというオファーを受けた購入者もいたとの話を語っている。
だが、その熱狂は2年ほどで潮が引くように冷めていく。
習近平の“号令”が冷や水に
海外への資金流出を抑えようと、まず中国政府が動いた。
2017年、習近平政権は個人の外貨購入の管理を厳格化し、年間5万ドル(約800万円)まで許可されていた購入枠について、海外の不動産購入などに充てることを明確に禁じた。フォーリン・ポリシーは、これがフォレストシティへの最初の打撃になったと指摘する。
それまでであれば、買い手は自ら資金をマレーシアへ送金する必要すらなかった。碧桂園は中国国内の販売センターでのカード決済や銀行振込、アリペイでの支払いを受け付け、深圳の金融会社と組んで住宅ローンも用意していたと、香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストは伝える。価格は最も安価な物件で約7万5000ドル(約1200万円)ほどであった。
だが規制強化を受け、同社は2017年3月に本土の販売センターを閉鎖し、本土の買い手には香港かシンガポールでの支払いを求める方式へ切り替えた。ここで初めて、年5万ドルの枠と使途制限が立ちはだかる。購入者たちは残りの代金を支払う手段を失い、碧桂園は違約金なしでの解約と返金に応じると表明した。

