予想外の場所から戦争が始まることも

ただ、いくつかのリスクも挙げておくべきであろう。ここでは2つ挙げておきたい。

ひとつは、歴史を見ると、大戦争は予想外の場所から始まることが決して少なくないことである。第一次世界大戦は当時の対立の主要軸であった独英や独仏の対立ではなく、バルカン半島情勢がきっかけとなって起こった。第二次世界大戦も最初の戦いはドイツとポーランドの間で起こった。

そう考えると、台湾を最前線として米中の対立が展開しているいまも、もしかしたら別の場所から戦争が始まる可能性には留意しておく必要があるように思われる。例えば南シナ海で武力衝突が起こり、どうせ戦争をするならば台湾侵攻も同時に実施してしまおう、と中国が考えるような展開である。

アメリカが犯した「しくじり」の歴史

もうひとつは、歴史的に見て、米国は時に抑止可能な戦争の抑止に失敗していることである。有名なのは1950年に始まった朝鮮戦争である。1950年1月12日、米国の国務長官だったディーン・アチソンが、米国の防衛線はアリューシャン列島から日本、琉球諸島を通過してフィリピンに延びると演説した。有名な「アチソンライン」演説だが、ここには朝鮮半島が含まれていない。そして5カ月後の6月25日に朝鮮戦争が始まった。

朝鮮戦争中、半島西部の島に上陸する中国人民義勇兵の部隊(1951年頃)
朝鮮戦争中、半島西部の島に上陸する中国人民義勇兵の部隊(1951年頃)(写真不詳/Public domain/Wikimedia Commons)

北朝鮮がアチソンライン演説を根拠に侵攻を決めたのかどうかは確定できていない。しかしながら、アチソンラインによって米国は韓国を防衛する意志はないと解釈される余地が生まれたことは間違いないし、少なくとも朝鮮半島を含めた形で演説していたらまた違う歴史をたどった可能性は否定できない。