「中国がこう思ったら有事」2つのパターン

さまざまな前提を踏まえて考えると、台湾海峡有事を防ぐためには以下の2つの可能性を局限していく必要がある。

第1は、中国に「軍事力を行使しなければ台湾が独立し、了解されている現状(中華人民共和国が中国を代表する)が打破される可能性がある」と思わせないことである。こうすることで、中国が「追い込まれた」と感じて武力統一オプションを選択するのを避けることができる。

台湾が一方的に独立を宣言する場合にはこうしたことが起こる可能性がある。米中国交正常化からいままで維持されている戦略的曖昧性には、台湾が一方的な行動をとるのを防ぐ効果がある。

地域全体での抑止力の強化が重要

第2は、中国に「軍事力を行使すれば確実に勝てて、統一に成功する」と思わせないことである。これまでは戦略的曖昧性の原則の下、米軍の介入の可能性があると中国に認識させることで、中国に「戦えば勝てる」と思わせないできた。

ただ中国の急激な軍拡でこの点は変化しつつある。中国の海空戦力およびミサイル戦力は非常に強力なもので、「少なくとも短期戦ならば勝てる」と中国が認識する可能性は決して低くない。この点から、地域全体での抑止力の強化は非常に重要になってきている。

2024年10月下旬、実戦を想定した遠海訓練を行う中国海軍の空母空母「遼寧」(右)と「山東」の艦隊。
写真=新華社/共同通信イメージズ
2024年10月下旬、実戦を想定した遠海訓練を行う中国海軍の空母空母「遼寧」(右)と「山東」の艦隊。

また、第二期トランプ政権が発表した国家防衛戦略には興味深い一節がある。台湾を含め第1防衛線で中国の膨張を阻止する必要があることを強調する一方で、中国の体制変革は求めないことにも言及したのである(※2)。

これは中国共産党を打倒して民主化を目指すことはしないことを含意していると考えられるが、これまで米国のアジア戦略の中で公式に明言したことはなかった。米国は台湾を防衛を重視してさまざまな努力を実行するが、それはあくまで台湾を防衛することに留まるものであり、中国共産党政権との共存は可能であることを伝えたと言うことでもある。

(※2)Department of War, “2026 National Defense Strategy,”(January 23 , 2026), p.10.