学術領域の知見を手にする方法

では、EBMを学ぶ第一歩として、何からはじめればいいのでしょうか。まずは、先述したルソー教授の指摘のとおり、人事の実務家として学術論文や専門書に目を通してみることです。初めは読みやすい入門書などで構いません。例えば『人材マネジメントの革新 理論を読み解くための事例集』(江夏幾多郎・石山恒貴・服部泰宏編著/千倉書房)や、拙著で恐縮ですが『組織分析の教科書 研究者と共創するエビデンスベース人事』(佐藤優介・甲谷勇平・羽生琢哉著/インプレス)などは、データ活用の知見や具体的な導入例がまとまっており、おすすめです。

佐藤優介氏
撮影=今村 拓馬
一般社団法人HR Buddy研究所 代表理事/慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師 佐藤優介氏

とはいえ、専門的な学術書を一人で読み込むのは、なかなか骨が折れる作業です。そこでおすすめしたいのが、同じ問題意識を持つ仲間と一緒に学ぶことです。

私自身、数年前から人事の実務家と研究者が集まって議論する場を続けていますが、一人で黙読するよりも、実務の悩みをぶつけ合いながら学ぶほうが知見の定着率は圧倒的に高まります。「自社ではどう応用できるか」といった具体的な議論に繋がるのも大きな利点です。

経営者の思いつきや他社の成功事例を鵜呑みにせず、まずは「一つの仮説」として捉え、自社のデータで検証することからはじめる。そして、仲間とともに実践的な議論の場を持つこと。それこそが、経験や勘に頼る人事から脱却し、組織を動かす確かな力を手にするための、明日から打てる確実な一手なのです。

【参考文献】
・Rousseau, D. M. (2006). Is There Such a Thing as “Evidence-Based Management”? Academy of Management Review, 31(2), 256–269.
・Edmondson, A. C. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
・Schmidt, F. L., & Hunter, J. E. (1998). The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology: Practical and Theoretical Implications of 85 Years of Research Findings. Psychological Bulletin, 124(2), 262–274.
・Smither, J. W., London, M., & Reilly, R. R. (2005). Does Performance Improve Following Multisource Feedback? A Theoretical Model, Meta-Analysis, and Review of Empirical Findings. Personnel Psychology, 58(1), 33–66.

(構成=伊田 欣司 撮影=今村 拓馬)

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