時事通信フォト=写真

軍事評論家 田母神俊雄(たもがみ・としお)
1948年、福島県生まれ。71年防衛大学卒業後、航空自衛隊に入隊。統合幕僚学校長、航空総隊司令官を経て、2007年に航空幕僚長を歴任。08年、懸賞論文で「我が国が侵略国家だったというのは濡れ衣」と書き、政府の歴史認識と異なるとして更迭された。


 

「本当はいい人なんです」と、タカ派イメージを払しょくする笑顔で都知事選に出馬した。自民党公認でないにもかかわらず、安倍内閣色を打ち出し、保守派の票を大きく割ることに。元都知事で日本維新の会共同代表の石原慎太郎氏を筆頭にそうそうたる保守派政治家、言論人が応援に駆け付けた。多くが安倍氏の「首相返り咲き」を支えたメンバーと共通。田母神氏自身も『安倍晋三論』を著し、政権への提言を行ってきた。

結果いかんにかかわらず、リトマス試験紙のように今ある日本の空気を反映した存在感を放ったことは間違いない。田母神氏が今後どのような道をとるにせよ、タカ派保守陣営を代表して日本の行方に影響力を発揮するキーマンになると思われる。

筆者自身が最初にお会いし名刺をお渡したとき、「僕乃名刺」とだけ書いたカードを渡された。冗談とも挑発ともとれる言動で相手の度量を試すようなところがある。一方で現役自衛官時代、責任感の強さから、部下たちからこの人の下でなら死ねる、と言わしめるほどの信望もあった。

空幕長時代、政府見解と異なる歴史認識に基づいた持論を民間懸賞論文に応募し、最優秀賞を受賞。これが原因で更迭された事件は広く知られる。日本の現状ではほぼ封印されている核武装論も臆さずに主張。何かにつけて米国の顔色をうかがう日本の現状に業を煮やす「真性保守層」からは絶大な人気があり、「タモさん」の愛称と気さくな人柄があいまってネトウヨと呼ばれる若者層にも心酔者が広がっている。今の日本人が取り戻したい自信や強さを体現し続ける限り、氏にチャンスが巡ってくる可能性は高い。

(時事通信フォト=写真)
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