一部の研究者は危険性に気づいていた?

筆者の推察では、異性化糖をマウスに与えれば、脂肪肝を誘導することくらいは、実験をすればすぐにわかる。

だから一部の開発部門の研究者は、間違いなく、この危険性に気がついただろう。とはいえその研究者も、脂肪肝をすぐに証明できても、ヒトが超肥満になる、とまでは確信をもって主張できなかった。

一方、会社の経営者から見れば、当然、肥満は脂肪が原因、という前提がある。それに比べれば、脂肪肝は小さな問題と思ったのではないか。さらに政府は、異性化糖を食材として認めているのである。

研究者と経営者との間に、脂肪肝について、短い会話があったかもしれない。しかし危険性について、経営者は耳を貸さなかった。もし今、異性化糖を大量に入れた低脂肪の食品をすぐに市場に出さなければ、他社が先に出すかもしれない。そのようななかで、「この商品を出さない」という選択肢はなかった。

日本でもガムシロップに含まれている

1970年から2000年の30年間で起こった事態の一端は、アメリカのスーパーマーケットに行けば体験できる。それは「低脂肪(low fat)」や「脂肪ゼロ(no fat)」の食品の氾濫だ。

アメリカのスーパーマーケットに行くと、生鮮食料品の隣のあたりに、乳製品が並んでいる。その広大な乳製品の陳列棚には、多種多様なヨーグルトが並んでいる。

アメリカでは、ヨーグルトや乳製品の商品の大部分は、「低脂肪」または「脂肪ゼロ」である。これらの商品には大量の異性化糖が含まれていて、食感は大変によく、そしてすごく甘い。そして今でも、大量の異性化糖が投入されている。

日本でも、異性化糖は身近にある。たとえば、コンビニのコーヒー売り場で無料で提供されているガムシロップは、異性化糖だ。また、パンケーキについてくるシロップも、メープルシロップなどと断りがない限り、異性化糖と思ったほうがいい。

消費者が、これらの甘味料を意識的に取り除かなければ、異性化糖の消費量は、生活の中でどんどん増えてしまうだろう。

ガムシロップ
ガムシロップ(写真=Miyuki Meinaka/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons