編み物好きにススメてくる「皇室」動画
この傾向は他の2人も同様だった。5日目まで、釣り動画を視聴したアカウントは上位10本中釣り動画が5~9本を占め、トップと2番手は必ず釣り動画だった。
編み物動画を視聴したアカウントも上位10本中6~8本が編み物動画で、こちらもトップと2番手は必ず編み物動画が表示されるようになっていた。この時点で3人のYouTube画面はそれぞれ「キャンプ」「釣り」「編み物」で染まっている。
興味深かったのが、編み物動画のみを視聴したアカウント(30代女性)で、編み物以外に多く表示されていたのが、芸能関係の動画と皇室の話題を取り上げた動画だった点だ。YouTube側に、「このユーザーは編み物以外だったら芸能や皇室について興味がありそうだ」と判断されたということだろうか。
釣り動画のアカウント(30代男性)は、釣り以外ではパチンコの動画が目立った。キャンプ動画を視聴していた中年男性の私のYouTubeには、パチンコ動画も皇室動画も出てこなかった。
土方氏によると、YouTubeのこうした挙動から、「動画をおすすめする仕組みに『協調フィルタリング』というアルゴリズムが採用されていることが分かる」という。協調フィルタリングとは、好みが似ている他の人の行動をおすすめしてくるという手法だ。
おすすめ動画を一変させた検索ワード
実験6日目、いよいよ3人中2人が検索ワードを変えた。キャンプ動画ばかりを視聴してきた私は「財務省解体」を、編み物動画ばかりを視聴してきたアカウントは「ディープステート」の動画の視聴を始めた。釣り動画のアカウントだけはそのまま釣り動画の視聴を続けた。
検索窓に「財務省解体」と打ち込むと、最初に出てきたのは2日前に財務省前で行われたデモの様子を実況する動画だった。再生回数は約3万3000回、「消費税廃止」などと書かれたタスキをかけた男性らが、マイクをリレーして演説する様子を固定カメラで撮影し、延々と流し続ける内容だった。
5分間視聴すると、関連動画の一番上にあった動画をタップした。財務省解体デモを報じる1カ月前の民放のニュース番組の動画で、約129万回視聴されていた。
この動画を最後まで視聴すると、関連動画の一番上に出てきたのが、著名インフルエンサーが財務省解体デモの現場を訪れて配信する内容のものだった。タイトルは「テレビでは報じられない財務省解体デモに突撃してみた」。視聴回数は約162万回に上る、いわゆる「バズった動画」だ。
財務省解体デモを報じる民放のニュース番組動画の関連動画が「テレビでは報じられない財務省解体デモ」というのは、なかなか皮肉が効いていた。

