「お見合い」で平和を保つ母系社会
いずれにしても、シャチの社会は、経験豊富なメスが率いる徹底した「母系社会」です。群れ(ポッド)のリーダーは、酸いも甘いも噛み分けた「ビッグママ」。その下に娘たちがいて、さらにその子どもたちがいる。
面白いのは、オス同士がリーダーの座を争ったり、メスを激しく奪い合ったりすることがほとんどない点です。なぜか。彼らには「スーパーポッド」という、いわば大海原の「集団お見合い」のシステムがあるからです。
シャチは繁殖期になると、それぞれのポッドが一堂に会し、そこでパートナーを見つける。これによって遺伝的なリスクが高くなる近親相姦を避け、群れの中の余計な対立を未然に防いでいると考えられています。
争いにエネルギーを割くくらいなら、もっと「前向きな目的」のために群れを作る。このあたり、ゴリラの平和主義とどこか似ていますよね。
「個」が自立した、甘えのない関係性
ただ、シャチの群れを見ていると、ある種のスッキリとした「冷たさ」というか、「個の強さ」を感じます。
人間社会では「なんとなく寂しいから」と集まったり、傷をなめ合ったりすることもありますが、シャチにとっての「群れる」目的とは、餌を獲る、外敵から身を守る、命を繋ぐといった、生きていくために必要なことばかりです。すべての個体が明確な目的を持って、主体的に動いているのでしょう。
「個」がしっかり自立しているからこそ、群れとしての機能が最大化される。個体識別をベースにした「個の認識」が、シャチの世界ではきわめてシビアに、かつ高度に完成されていると感じます。

