稲盛和夫●1932年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年京都セラミツク(現・京セラ)を創業。第二電電(現・KDDI)創業を経て日本航空会長・名誉会長に。

ビジネスを成し遂げようとするとき、何が必要になるのでしょうか。答えは「大義」です。私は、このことを体験をもって学びました。第二電電(現・KDDI)を立ち上げ、通信業界へ新規に参入をしようというときのことです。NTTが事業を独占していた1980年代前半まで、電話料金は欧米に比べて圧倒的に高い状態が続いていました。しかし、独占事業であったため、料金が高くても、利用者にはほかの手段はありません。

通信の自由化にあたり、私が掲げた「大義」は、安価な電話料金を実現することでした。84年の設立にいたるまでの半年間、私は自問自答を繰り返したことを覚えています。「稲盛和夫よ、今、お前がやろうとしていることは、本当に国民のためを思ってのことなのか? 名を残したいという私心からではないか。動機善なりや、私心なかりしか」と。そうして、一片の私心もないことを確認し、第二電電を創業しました。

(総括、分析・解説=楠木 建 構成=小川 剛 撮影=奥村 森)
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