福井威夫●1944年、東京都生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。2003~09年に社長を務め、現在は相談役。本田宗一郎を知る最後の世代といえる。

創業者・本田宗一郎の時代から、「現場・現物・現実」の3現主義に徹してきたホンダでは、現場で仕事を通して学ぶことが求められます。私も早稲田大学理工学部から1969年に入社し、CVCCエンジン開発プロジェクトの一端を担って、その洗礼を受けました。

CVCCは当時、世界一厳しいとされた米マスキー法の排ガス規制を最初にクリアした画期的な低公害エンジンです。社長職にあった本田さんは毎日のように現場にやってきては問題点を見つけ、われわれに宿題を出していきました。「こんなの可能なのか」と思えるような難題です。次の日もやってきて解決できていないと、「まだやっているのか、バカ野郎」と怒鳴られる。毎日が必死でした。