なぜ加工用ジャガイモならOKなのか
実は、日本にもすでにジャガイモシストセンチュウは存在します。1972年に北海道後志管内で初めて黄色いジャガイモシストセンチュウが、2015年には網走市で別種のジャガイモシロシストセンチュウが初めて確認され、現在も緊急防除(※1)が続いています。
こうした事態をなるべく防ぐために植物検疫があり、長らく生食用ジャガイモの輸入が見送られてきたわけですが、それでもジャガイモシストセンチュウの国内侵入を完全には防げていないのです。
なお、加工用ジャガイモにも厳しい輸入条件があります。例えば害虫であるジャガイモシストセンチュウ類が発生していない地域で生産すること、土を水洗いで除去すること、密閉型コンテナで運び、輸入後は速やかに指定施設へ運ぶこと、そして港の近くにある指定施設で加熱加工することなどです。
少しでも土やシストセンチュウが見つかれば、荷口全量を廃棄または返送し、その原因が分かるまで以後の輸入検査も止められます。これは単なる形式的な手続きではなく産地、輸送、加工、残さの処理までを一本の管理された流れに置くことで、畑に病害虫が逃げ出す機会をできるだけ小さくしているのです。
※1 植物に大きな被害を及ぼす恐れがある病害虫等の有害動植物が新たに国内に侵入した場合や、既に国内の一部に存在している場合にそのまん延を防ぐために緊急に行われる防除措置。
輸入解禁には確かにメリットもある
では、アメリカ産の生ジャガイモの輸入には何もメリットがないのでしょうか。もちろん、メリットもあります。3つほど例を挙げてみましょう。
第1に、ジャガイモの仕入れ先を増やせることになります。国内で不作が起きたとき、特定の産地からの出荷が減ったときに、調達先が一つ増えれば、外食産業や小売業は品不足のリスクを抑えやすくなります。
第2に、ジャガイモの価格が急騰しにくくなることが期待されます。輸入量や為替、輸送費によって実際の店頭価格は左右されるため、「輸入すれば必ず安くなる」とまでは言えませんが、国内の供給だけに依存するよりは選択肢が増える分だけ価格変動を和らげる効果はありそうです。
第3に、外食・中食産業にとっては、必要な規格や品種を安定的に確保しやすくなる可能性があります。消費者にとっても、異なる食感や調理適性を持つ品種を選べる機会が増えるかもしれません。食の多様化の一助となる可能性はあります。
実際、現在も日本のジャガイモ需要に対する供給は、国内産だけで賄われているわけではありません。2024年度の国内需要は約350万トンで、国内生産は約230万トン、その差の多くは冷凍品・加工品などの輸入で補われています。だからこそ論点は「輸入か国産か」の二択ではなく、一般流通用の生鮮ジャガイモにまで対象を広げる際に現在の厳しい防疫水準を下げずに済むのか、維持できるのかという点にあるのです。

