在留資格の厳格化による影響
現在、陳さんは日本に戻り、数年ぶりに都内で暮らし始めている。
陳さんに問い合わせてみると、「中国人だけれど、一度、外の空気を吸った人間が中国社会に馴染むのは難しいと思って悩んでいたところ、以前からの知り合いの在日中国人が『自分のビジネスを手伝ってくれないか』と言ってくれたので即決しました」という。仕事は詳しくない業界だが、「在留資格がもらえるなら、それだけでいい」と思ったそうだ。
陳さんが日本に舞い戻ってきたのは昨年の夏だ。昨年10月16日、日本政府が在留資格「経営・管理」の厳格化に踏み切ったことは、日本で大きく報道された。ペーパーカンパニーの存在など不正が発覚したことが背景にある。資本金が500万円から3000万円に引き上げられ、常勤職員の雇用や日本語能力などが新たな要件に加えられた。これがきっかけで「日本から手を引く」中国の富裕層が増えたと言われている。
陳さんの在留資格は技術者、営業、通訳などの専門職が取得することが多い「技術・人文知識・国際業務」(技人国)だが、これも今年4月、日本語能力試験の「N2」(幅広い場面の日本語をある程度理解できるレベル)が必須となるなど取得要件が厳格化された。
「技人国」を取得したのに、実際はベビーシッターなど単純業務に従事しているという資格外活動が発覚したからだ。
日本が恋しい――切実な声
陳さんの場合、日本語は流暢なので、その点はもともと問題なかったが、陳さんいわく「今後、日本に舞い戻りたい、あるいは日本で就職したいと考えている中国人にとって、日本で働く条件が以前よりずっと厳しくなり、ハードルが上がったことは確か」だそうだ。陳さんは「私の場合は厳格化される前だったのでラッキーでした」と語る。
そうした「在留資格の厳格化」に関する情報は中国のSNS、小紅書(シャオホンシュー)にも頻繁に流れてくる。従来は比較的簡単に取得できた在留資格が厳格化されたため、今後はどのような在留資格を得たらよいのか、どういう抜け道があるかについて、仲介業者と思われる人が「攻略(ゴンリュエ=具体的なやり方)方法を教えます」といった投稿をしていることも見かける。
日本政府がいかに在留資格を厳格化しようとも、抜け道を考え、不正をする人が絶えることはなさそうだ。
だが、孫さんや陳さんのように、中国人でありながら、厳しい中国での生活に馴染めず、一度暮らした日本を恋しく思い、在留資格の要件を十分満たした上で、「ただ日本に戻りたいだけ」と思う人も少なくないのだ。
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