非人道的なコロナ対策と景気悪化

中国では各地で連日、住民のPCR検査を実施したり、ある建物で感染者が出ると、その場にいた人全員が強制的に隔離施設に移送されたりといった非人道的な対策が公然ととられるようになった。

孫さんは「政府のメンツのために、ゼロコロナ政策は継続され、SNSでの批判は情報統制で全部削除された。重い病気でも(コロナ対策で)入院できないで亡くなる人が続出するなど、数えきれないほどの悲劇がありました。両親が『中国の対策はすばらしい』と言っていたのは、政府がメディアを使って行った宣伝を鵜呑みにしていたからです。

日本のコロナ対策は個人の判断に任せるところがあり、最初のうちは、それが頼りなく見えて不安だったのですが、実は、それは日本人全体の民度が高いからできることなのだと、あとになって気づきました。私が浅はかでした」と語る。

その上、孫さんを悩ませたのは中国の深刻な景気の悪化だ。コロナ禍と不動産不況というダブルパンチで経済が低迷した。孫さんは最初のうちは、日本語を使う仕事をしたいと思って探していたが、孫さんが住む都市には需要がなく、かなり長い間失業状態が続いたという。現在は地元企業で働いているが、社員同士の足の引っ張り合いが多く、ストレスがたまるという。細かいことで干渉してくる両親と3人で暮らす生活も窮屈で、給料も日本にいたときよりずっと少ない。「日本に住んでいたころ、いかに自分が恵まれた生活を送っていたかを思い知った。できれば、また日本に戻って暮らしたい」と話してくれた。

白いハズマットスーツを着た医療スタッフ
写真=iStock.com/Robert Way
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親からの激しい結婚催促で帰ったが…

別の女性、陳さんも以前、東京都内で働いていたが、30代に入って、中国に住む両親から結婚についての催促が激しくなり、断り切れず、数年前に帰国した。

両親が気に入った男性とのお見合いを繰り返したが、「一度も海外旅行にさえ行ったことがない男性とは価値観が合わず、どうしても結婚する気になれなかった」と陳さん。親戚からも「なぜ、こんなにいい条件の男性と結婚しないのか?」「結婚しないのは人間として問題があるからだ」と批判され、つらかったという。

中国の田舎では、両親だけでなく、祖父母や親戚まで結婚に口出しをすることは珍しくない。地元に住む高校時代の友人は20代のうちにほとんどの人が結婚して子どもを産んでおり、日本でキャリアを積んできた陳さんの生き方を理解してくれず、「母国にいるのに孤独を感じた」(陳さん)。

北京に住む大学時代の友人たちは皆、中国国内で就職して10年以上の経験を積んでおり、連絡を取ってみると「競争が激しすぎて生きていくことがつらい。人間関係も複雑で気が休まらない。可能なら海外に住みたい」とこぼしたそうだ。

陳さんは故郷ではなく北京で再就職できないかと試みたが、「中小企業でさえ就職は困難な状況。日本への留学経験があるとはいえ、そんな人は北京にはゴロゴロいる。とくに30代になった文系女性の再就職は難しい」と打ち明ける。