「中断したものが気になる心理」を活用
さて、このツァイガルニク効果の応用版として、とくにビジネスの現場で力を発揮するのが、心理学者マリア・オヴシアンキーナーが提唱した「オヴシアンキーナー効果」です。これは、未完成で中断した作業を再び完了するまで実行したくなる心理のこと。
ツァイガルニク効果との区別が少々紛らわしいですが、ツァイガルニク効果が記憶に残るという「認知」の現象だとすれば、オヴシアンキーナー効果は実際の行動を促すという点でより実践的な「行動」効果を指します。
オヴシアンキーナーは興味深い実験を行ないました。被験者に粘土の人形作り、知恵の輪、パズルなど10種類の簡単な作業を指示し、合計280個の作業のうち、約半数の141個を途中で意図的に中断させました。
すると興味深いことが起きました。実験がいったん終わり、誰からも「続けていい」と言われていないにもかかわらず、多くの人が自分から中断された作業に戻って再開し始めたのです。しかも、その多くは中断からわずか20秒以内でした。
つまり人は、「途中までやったのに終わっていない」という状態を、そのまま放置するのが苦手なのです。中断された作業ほど頭に残り、「最後まで終わらせたい」という気持ちが自然に生まれる。この心理を示したのが、オヴシアンキーナー効果です。
すぐに取り入れられる「2分ルール」
オヴシアンキーナー効果が示しているのは、「いったん始めてしまえば、人は続きをやりたくなる」ということ。逆に言えば、自走を阻んでいる最大の壁は「最初の一歩を踏み出すこと」だと言えます。この事実を踏まえた実践的な方法論が、ジェームズ・クリアーが著書『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』(パンローリング)で紹介した「2ミニッツ・スターター(2分ルール)」です。
クリアーは、「新しい習慣を始めるときには、それは2分以内でできるものであるべき」「重要なのは、習慣をできるだけ始めやすくすること」と説きました。人は「続けること」ではなく「始めること」でつまずくことが多い。だからこそ、最初の行動を極端に小さくして、心理的なハードルを下げる。一度始めれば、オヴシアンキーナー効果が働いて、そのまま続いていくことが多い、という発想です。
2ミニッツ・スターターのポイントは3つあります。
第1に、「継続」ではなく「着手」にフォーカスすること。
第2に、完璧を目指さないと最初から決め、面倒という心理的バリアを外すこと。
第3に、いったん始めてしまえば、オヴシアンキーナー効果によって「完了するまでやめられない状態(一種の行動の慣性)」が生まれることを期待すること。

