変えたいのは「意識」ではなく「仕掛け」

冒頭の「なかなか動き出さないチーム」に当てはめてみましょう。メンバーが指示待ちになっているのは、能力の問題ではなく、「最初の一歩を踏み出すための心理的コスト」が高いからかもしれません。

「ブリーフを読み込んで企画を立てる」と言われると重く感じるが、「2分間だけアイデアを書き出す」と言われればもっと肩の力を抜いて始められるはずです。そして一度始まれば、オヴシアンキーナー効果が続きを促してくれるのです。

自走するチームをつくるうえで、リーダーがまず手放すべきなのは「メンバーの意識を変えれば自走するはずだ」という幻想です。意識を変えるのは難しいですし、変わっても長続きしません。

それよりも、意識が変わらなくても自然に動き出してしまう「仕掛け」を組織に組み込むほうが、はるかに現実的で効果的です。ツァイガルニク効果やオヴシアンキーナー効果は、人間の心理に普遍的に備わっているエンジンですから、これを利用しない手はありません。

ビジネスミーティング
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まずは「2分でできる業務」を切りだす

最初に取り組みたいのが、業務の最小着手単位を「2分でできる」レベルまで小さくする工夫です。

「企画書を書く」ではなく「企画のキーワードを3つ書き出す」
「議事録をまとめる」ではなく「議題のタイトルだけ箇条書きにする」

こうした小さな最初の一歩の有効性をメンバー全員が知り、必要に応じて活用できること。それだけで、業務が動き出すスピードが大きく変わります。重要なのは「完璧を目指さない」ことを最初から認めて、メンバーの心理的ハードルを下げることです。

次に有効なのが、「中断点を意識的に残す」働き方の習慣化です。多くの人は「キリの良いところまで終わらせて休もう」と考えがちですが、行動経済学的にはむしろ逆。あえて中断点で区切ることで、再開時の着手コストが大幅に下がります。明日に手を付けやすい状態にして今日を終える、と意識を切り替えるだけで、翌朝のスタートが軽くなります。

そして、これらをチームで活用する方法のひとつが「始めるタイミングと内容を合わせた共同のアクション」を取り入れることです。

「毎朝9時30分に全員で5分間アイデア出し」「会議の冒頭2分間でその日の課題を書き出す」など、タイミングと内容を明示したアクション。それによって、チーム全体に自走の慣性が生まれていきます。

オヴシアンキーナー効果は個人だけでなくチームでも働きますし、加えて同調効果も影響して「みんながやるから自分もやる」という流れが生まれやすくなります。