キャリアも実績もあり過去に問題はなかった
この事故の一報を聞いて、マンガ『脳外科医 竹田くん』を思い出した方もいるかもしれない。このマンガは「兵庫県の赤穂市民病院に複数の医療訴訟をもたらした実在の脳外科医」がモデルとされる内容で、「ヤバい脳外科医」が医療ミスを連発しているにもかかわらず、病院のガバナンス欠如のため阻止できないという様子を描いている。
2023年にWEB連載され評判となった当時は、「今は外科医不足で、地方の市民病院ならあり得る」という受け止めもあったが、今回のニュースを聞いて「日本屈指の名門である京大病院にも『竹田くん』系医師が潜んでいるのか」と驚愕した人も多かっただろう。
しかしながら、今回の執刀医は長いキャリアがあり、実績もあり、過去に問題があったわけではない。
ひとつ言えるのは、外科という診療科の医師に多い「ある傾向」である。「10時間の大手術の執刀に耐えうる集中力」を持ち合わせる有能な医師は自信家が多く、時に「他人の苦言を聞かない独善」と表裏一体な部分がある。あえてカジュアルな表現をすれば「俺様ドクター」のキャラが他の診療科より多い。それは筆者だけでなく、多くの医師が感じていることだ。
今回の執刀医の人間性がどんなものか、それはわからない。だが、「繊細な集中力」が要求される脳外科医は、そうしたプラスとマイナスの両方の特徴があるのは確かだ。患者心理としては、「手術は私に任せて」と言ってくれる医師は頼もしいが、すべての手術を常に無事故で100%成功に導けるかどうかは未知数だ。
暴走しかねない「俺様ドクター」の見分け方
では、名門病院に潜む可能性がある暴走しかねない「俺様ドクター」を見抜く方法はあるのか。
事前に見極めることは非常に困難だが、機会はある。生命に関わるような手術をする場合、通常、外科医から時間をかけて(30〜60分程度)事前の説明がある。その時間は患者側から外科医をジャッジする最大のチャンスでもある。
まず、説明の前に患者側はAIで基本情報を入手しておくことをお勧めする。AIに「小脳橋角部の3cmの髄膜腫の治療方法」と入力すれば「手術療法」の他にも「放射線」「手術と放射線の組み合わせ」「経過観察」などの選択肢を挙げてくれるはずだ。
その後、外科医の説明を聞いてみて、手術のみならずAI同様に他の選択肢も提示する外科医ならば安心である。逆に「手術しかありません」といった断言調の説明ならば、要注意かもしれない。その場合、勇気を出して「手術以外の方法はありませんか」と訊ねてみるといい。「腫瘍と聴神経が近いので手術がベストでしょう」など根拠を示すならまだしも、「嫌なら退院してください」などと不快感を露骨に顔に出すようなタイプなら、転院を検討すべきかもしれない。
また、手術前説明には執刀医のみならず、若手脳外科医や看護師が立ち会う事が多い。執刀医に「手術しかありません」とアピールされたような場合、メインの医師のアシスタントをする若手医師や看護師などの反応を観察することをお勧めしたい。
手術には執刀医のスキルのみならず、チームワークも大切である。もし、執刀医の発言を同僚がやや冷めた目やウンザリした表情で見ているならば、それは何かのサインかもしれない。患者本人もしくは、説明を一緒に聞いた家族などが、後で若手外科医や看護師を捕まえて、「本当に手術すべきだと思いますか? 秘密は守りますから教えてください」と聞くべきだ。「口下手だけど腕は確かです」などフォローされるなら、いいかもしれないが、「私からは何も言えません」などと濁されたらこれは明らかに注意信号だ。「私の親なら勧めない」など断言された場合も即転院を検討すべきだろう。

