若い医師へバトンを引き継ぐ
1年後、この診療所長が家庭の事情で退職することになりました。
そのときの僕の、彼女への言葉です。
「寂しくなるな。先生と緩和ケア病棟の回診をしたり、いっしょに訪問診察をして、いい時間を過ごさせてもらいました。患者さんを大切にする先生の姿勢、大好きでした。僕ががんになったら、先生に診てもらおうと冗談を言ったことがありましたが、あれは本心です。鎌田が末期がんになったと噂を聞いたら戻ってきてください。三月までに一回ご飯を食べましょう」
彼女からの返信です。
「私、諏訪中央病院で先生と働くのが夢で医者になったので、少しでしたが先生とご一緒できて本当にうれしかったです。夢をかなえていただきありがとうございました。先生ががんになって、私が先生の主治医になったら、スケジュール管理ばっちりやって、あの方この方、鉢合わせしないように、いろいろな人に会わせてあげますね、って約束しましたよね」
僕の返信です。
「その通り、よく覚えてるね。ちゃんといろんな人に、ありがとう、さようなら、って言いたいのでよろしく。昔のガールフレンドにもね」
「承りました」
――こんなふうに若い医師と出会い、若い医師を育てながら、バトンを引き継いでもらっていく準備をしておくことが大事なのです。
ユーミンが歌にした六本木の老舗
人間関係のメンテナンスについては、いまでもお世話になっている人とは、いっしょにご飯を食べるということを極力するようにしています。
いっしょにご飯を食べることで、なんだか新しい絆ができていくことが多いように思います。
東京から取材に来たりした人たちに対しても、こちらに時間の余裕があるときには、行きつけのお蕎麦屋さんにお連れしたり、イタリアンにお連れしたりします。
東京では、僕の顔が利くお店は3つあります。
例えば、六本木のイタリアンの老舗、60年以上前にできたキャンティ。
三島由紀夫や黒柳徹子、川端康成、ユーミンなど、文学者や芸能人が多く利用し、ユーミンが歌にもしています。
いい本が完成したり、大ヒットをしたときなどは、編集者やライターなどといっしょにご飯を食べることにしています。
それによって、また次の作品にみんなが情熱を持ってくれるようになります。

