X(旧ツイッター)で、アカウント名「中村りほ@立憲民主党」という女性政治家の投稿が騒動になっている。生成AIによる架空の政治家だったからだ。『SNS選挙という罠』(平凡社新書)を書いた作家・批評家の物江潤さんは「SNSを、まともな言説が交わされる場として扱うのはやめるべきだ」という――。
とうとう日本でも登場した"架空政治家"
とうとう、日本でも起きたか。
「中村りほ@立憲民主党」なるXアカウントをめぐる騒動を知ったとき、そんな感想が頭に浮かんだ。後述するように、すでに諸外国では類似した事例が起きており、日本でも生じるのは時間の問題だった。
女性支援や子育て支援などについて発信を繰り返していた同アカウントのプロフィールには「性暴力から妊娠、出産」という文言が記されていた。投稿には出産時の不安や痛み、わが子の産声を聞いたときの涙が記され、赤ん坊を背負って政治活動をする画像もあった。
「娘ははじめてのお祭り。去年はまだお腹にいたからわからないかな」と母親らしい感慨を綴る一方、「骨盤の骨折も治りかけ、ようやく和式で小が出来るようになりました」という投稿までしていた。
ところが、この若き政治家「中村りほ」は架空の存在だった。アカウントを運営していたのは立憲民主党栃木県連に党員登録している男性であり、女性の画像は生成AIで作成したとみられる。つまり男性が、実在しない若い女性の妊娠や出産、果てには排泄にまで言及しつつ政治的な発信を繰り返すという、なんともおぞましい事実が明らかになったのだ(なお、県連はアカウントの運用への関与を否定している)。
事の顛末が判明していくと、SNS上には嫌悪感を表明する言葉が並んでいった。そんな嫌悪の言葉に誘導されたのか、頭に浮かんだのは「腐ったレモン」だった。ここでの「腐ったレモン」とは、ビジネス書などでもたびたび紹介されるレモン問題のことだ。

