アメリカで大バスした「MAGA美女」の正体

当初、サムは副収入を得ようとして、AIで作った露出度の高い美女をインスタグラムへ投稿していたが、ありふれたAI美女だったためか反応が得られなかった。

そこで生成AI「Gemini」に助言を求め、いくつかの差別化案を提示したところ、Geminiが選んだのが「MAGA/保守系ニッチ」だったという。そしてサムは、この差別化案を遂行するため行動に出る。

米国に住んだ経験はないものの、サムはMAGA思想を徹底的に研究した。「毎日、親キリスト教、銃規制反対、中絶反対、反“woke”、反移民の投稿を書いていた」と語る。

この手口はあまりに露骨に思えたが、彼の驚きとは裏腹に、アカウントは「爆発的に伸びた」という。「投稿するリールはすべて300万、500万、1,000万回再生。アルゴリズムに愛されました」とサムは主張する。

1カ月でフォロワーは1万人を超え、その多くがOnlyFansの競合サービスFanvueでエミリーのソフトコアなAIコンテンツに課金した。さらにMAGA風Tシャツ(例:「PTSD:Pretty Tired of Stupid Democrats」)の販売も合わせ、月に数千ドル(約数十万円)を稼いだと見積もっている。

「1日30~50分の作業で、医学生としては十分すぎる収入でした。インドでは専門職でもこんな額は稼げません。こんなに簡単に稼げる方法は見たことがありませんでした」と彼は語る。

(「AI生成の『MAGA美女』で男たちから金を巻き上げた――医学生だと語る人物の手口」WIRED.jp)

4カ月あまりで100万人以上のフォロワー

また、同記事でサムは反対派が腹を立ててコメントを書き込むことについても、結局はクリックされるのだから好都合だという趣旨のことを語っている。支持される必要がないどころか、熱心に批判する者までが金を運んでくる客になっていたのだ。

支持者から称賛されようが、反対派から罵倒されようが、注意を奪うことができれば商売は成立する。このビジネスが利益をあげる一方、SNSには腐ったレモンが増えていくという負の外部性が拡大していくだろう。

実際、同様の事例は続々と報告されている。同年5月にはAFPも、米国のSNSで、水着姿や軍服姿の金髪女性など、AIによって生成されたトランプ支持の「インフルエンサー」が多数現れていると報じた。また、前述のWIRED.jpによれば、架空の女性兵士「ジェシカ・フォスター」は、4カ月あまりで100万人以上のフォロワーを獲得したという。

今回の「中村りほ@立憲民主党」は、金儲けのために作られたのではないだろう。しかし、「若い女性」「母親」「性暴力の経験者」「政治について語る当事者」といった属性を組み合わせ、実在しない人格によって人々の注意や共感を集めるという点では同じだ。得ようとしたものが金だったのか、承認だったのか、政治的な影響力だったのかという違いにすぎない。