医師の目から見た「恐ろしい店」
最近はSNSでさまざまな「美味しい店」が紹介されて、話題になっています。でも、その中には、医師の目から見ると「恐ろしい」と感じる店があります。それは牛や鶏、豚、ジビエなどの「生肉」「加熱が不十分な肉」を名物にしている店です。
新鮮な生肉には独特の風味があり、とろっとした舌触り、しっとりとした食感が好きだという人は少なくありません。しかし、肉の生食には、食中毒のさまざまなリスクがあります。
食中毒というのは、飲食物を介して病原体や毒素などを取り込んだことによって起こる健康障害の総称です。お腹が痛くなったり吐いたりする程度だと思っている人も多いかもしれません。でも、じつは食中毒になると、命を失ってしまうケースもあります。それなのに「新鮮だから大丈夫」「ちゃんとしたお店だから安全」と誤解する人があとを絶ちません。
そこで、牛肉、鶏肉、豚肉、ジビエなどの生食にはどんなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。
焼肉チェーン店の集団食中毒事件
まずは、牛肉から。2011年4月、焼肉チェーン店で提供された牛刺しやユッケによって、181人が激しい大腸炎を発症し、子どもを含む5人が亡くなった事件を覚えている人も多いでしょう。この集団食中毒事件をきっかけに、牛肉を生食用として提供する場合の厳しい処理基準が食品衛生法に基づいて設けられました。
食中毒の原因は、牛肉に付着していた腸管出血性大腸菌(O157やO111)でした。「O」というのは大腸菌の表面にある抗原で、病原性のないものも含め200種類近くに分類されます。そもそも牛自身は、O26、O111、O157といった人間に腸管出血性大腸炎を起こす菌を持っていても症状が出ません。さらに、切った肉の見た目からも菌の有無は判断できないので、新鮮な肉でも表面に付着していることが多々あります。でも、腸管出血性大腸菌は、75度以上1分間の加熱で死滅します。だから、加熱が必要なのです。
ステーキのような一枚肉だったら、まだ表面をしっかり焼くことで、安全性を飛躍的に高めることができます。でも、ハンバーグのような挽肉や、包丁で細かく刻むユッケは、表面についていた菌が肉の内部まで混ぜ込まれてしまうため、生焼けやレア状態で食べるのは非常に危険なのです。


