「ギランバレー症候群」の恐ろしさ

ちなみにカンピロバクターによる食中毒の恐ろしさは、腸炎によって腹痛や高熱に苦しめられるだけではありません。

じつは腸炎が治った1〜3週間後に「ギラン・バレー症候群」になることがあるのです。ギラン・バレー症候群とは、自分の免疫が誤って自身の末梢神経を攻撃する病気で、足から徐々に力が入らなくなり歩行困難になります。症状が上に進行すると、呼吸筋まで麻痺し、人工呼吸器が必要になることも。カンピロバクター腸炎になった人の約1000人に1人ぐらいの割合で発症し、ほとんどの人は治りますが後遺症が長引くケースもあります。

先日、東京に住む整形外科医が、加熱が十分でない鶏肉を食べた後にギラン・バレー症候群になったということが報道されました(※1)。数日間は呼吸もできず、ICUに長期間入院した後も手足に麻痺が残り、要介護認定を受け、開業していた医院は閉院せざるを得なくなったといいます。なんと壮絶な体験をされているのだろうと思いましたし、ご回復を心から願っています。

※1 朝日新聞「加熱不足の鶏肉食べた医師、車いす生活に『避けられたリスクだった』

【図表1】肉の種類と主な病原体

豚肉の生食が禁止されている理由

豚肉は、生で食べてはいけないとほとんどの方が知っているでしょう。ところが、近年、加熱不十分でピンク色の豚肉を「レアチャーシュー」と称して提供する店があり、問題になっています。適切な温度と時間で加熱されていれば問題ありませんが、中心部まで十分に加熱されていない豚肉には、生肉と同様のリスクが残ります。2025年にレアチャーシューに関連するサルモネラ菌の食中毒が起こっています。

豚肉は、サルモネラ菌、E型肝炎ウイルス、カンピロバクターだけでなく、日本ではまれなものの「旋毛虫」や「有鉤条虫」といった寄生虫がいることもあり、危険性が高いため、法律で生食が禁止されているのです。

サルモネラ菌も、食中毒を起こすことでよく知られています。サルモネラ菌を保菌しているのは、豚以外にも、鶏、牛、ミドリガメ、爬虫類が知られています。加熱が不十分な肉のほか生卵も原因になり、発熱や腹痛、嘔吐、下痢が起こり、乳幼児が感染すると、菌血症や髄膜炎などの命に関わる重症化のリスクがあるので注意が必要です。