「生産力過剰」と「需要不足」という中国経済が抱える宿痾の両面
中国! この巨大な隣人が一筋縄ではいかないのはご存じの通り。覇権を目指しつつセコい虚勢と恫喝や開き直りの連続、きらびやかな都市の足元の格差と反日頼みの社会統制、そして経済も、ハイテクやEVの躍進の一方で一触即発とされる不動産バブル。
各種報道や書籍はその明暗どちらかだけを強調したがる。だが、世界覇権の輝く大戦略たる一帯一路は次第にボロがでてきているようだ。一方、恒大集団などの不動産危機でも、中国経済は崩壊していない。さて、どう見ればいいのか?
本書は中国経済について、この双方で折り合いをつけてくれる良書だ。実は明暗どちらも正しい。それどころか、これらはすべて中国経済が抱える、生産力過剰と需要不足という宿痾の両面であり、表裏一体なのだという。
マンション過剰供給の不動産バブルは事実で、コロナはそれに拍車をかけた。中国はそれに金融拡大による融資増で対応したが、需要拡大のための財政支出を嫌ったため、実体経済はまわらない。人々の豊かさも頭打ち。不動産は売れ残ったまま経済社会はデフレに向かい停滞する。
そしてだぶついた資金の行き先として、EVを筆頭に各種産業は補助金漬けで急発展はする。だが需要不足でその先が見えず、ダンピング輸出に走る。一帯一路も変貌を余儀なくされる。中国自身も、この需要不足問題に気づいたようだが……。
書きぶりのバランスも本書の魅力だ。類書の多くは理論と統計の座学開陳に終始するか、あるいは、足元の卑近なルポにとどまる。だが本書は、梶谷が学者としてマクロな議論を押さえ、高口が実際に現地で幽霊マンションやEV墓場の様子を見て、現地の人々の声まで拾う。そのルポ部分だけでもおもしろいし、理論や統計に食指が動かない読者でも各章末には議論のまとめがついているので、ものぐさな方はそこだけ見ればあらましはわかるという親切さ。
本書を読めば、中国経済の現状の見通しはずっとよくなる。その経済状況が政治や社会にどう影響するかもわかるはずだ。中国の内需拡大とデフレ転落阻止は中国自身の問題で、日本は見守るだけだが、背景をフェアに理解することで過剰反応は避けられる。
本稿執筆中にトランプ米大統領が正式に就任した。今後の米中関係は波乱含みで、日本も否応なく影響を受ける。
各種メディアでの中国上げ/下げ報道はさらに過熱するだろう。そうしたものに一喜一憂せず、落ち着いた見方をするためにも、ぜひともご一読を。
蛇足ながら、中国の現状は財政均衡にこだわって経済を殺しつつある日本の鏡像でもある。日本もその迷妄から目覚めねば……というのが本書の裏の教訓だと評者は思うが、うがちすぎだろうか。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます



