現代社会で脅威となる自然現象の一つに気象災害がある。台風や線状降水帯の発生によって土砂災害が起き、毎年多数の犠牲者が出る。また地球温暖化は全世界で問題となり、脱炭素政策は政治経済の中心課題だ。いずれも地球を取り巻く「大気」で起きる現象だが、これを研究する分野が地球科学である。
本書はその本質をわかりやすく解説する入門書で、地球大気の成り立ちから気候変動まで数多くの図版を用いてビジュアルに解説する。著者は新進気鋭の気象学者。文系出身だが天気に興味を持ち、大学入学後に気象予報士の資格を取得した。大学で担当する地球科学は受講希望者が1000人を超え、毎年抽選を行う講義名人でもある。本文中にユーモラスな挿絵を挟み、楽しみながら学べる工夫が随所に施されている。
第1〜3章では地球を取り巻く大気の基本事項を押さえる。地球大気の成り立ちと運動、地球のエネルギー収支を理解し、地球がいかに特別な環境を持つ星であるかを学ぶ。
地球上には38億年前から生命体が存在するが、それを支えるのは「液体の水が存在するから」だ。すなわち「ハビタブルゾーン」(生命居住可能領域)は「水が液体の状態でいられる範囲」にあり、「太陽からどれくらい離れているか」で決まる。太陽系の惑星では地球だけが奇跡的にハビタブルゾーンに入っている。
そもそも誕生直後の地球大気に酸素はなかった。微惑星の衝突によって大気に放出された水蒸気はやがて雨となり、地表に海が誕生した。その後、海中のシアノバクテリアが光合成によって酸素を生成し、大気中に酸素が増えていった。第4〜7章では身近な気象現象を解説する。大気の大循環、高気圧・低気圧・前線・台風・集中豪雨・竜巻・気圧配置などの仕組みをわかりやすく解き明かす。
後半の第8〜11章では気候変動の概念と地球温暖化のメカニズムを扱う。近年話題となっている海面上昇や豪雨災害をはじめとして地球温暖化に対する国際的な取り組みも解説する。「私たちの努力で未来の地球は変わる」(本書69ページ)と「身近にできる地球温暖化対策」(70ページ)に書かれたメッセージは有益である。第12〜13章では、エルニーニョ現象とヒートアイランド現象を取り上げ、緑のカーテンと屋上緑化などを紹介する(82ページ)。
現在の高校では「地学」の履修率は5%程度しかないため、日本人の地球に関するリテラシーは中学の義務教育で止まっている。評者も地学の応援団を買って出て改善に努めているが(『みんなの高校地学』ブルーバックス)、本書は自力で知識を補充する際に最適のテキストと言えよう。気候変動や脱炭素政策に関心がある多くのビジネスパーソンに薦めたい。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年2月14日号)の一部を再編集したものです。
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