前編でも記したように、インスタントハウスの設置費用は材料費、施工費を含めて1棟50万円。どこでも設置可能で、最短1時間で完成する。
施工も簡単で、断熱業者がトレーニングを兼ねて1棟建てれば、あとは任せることができる。断熱性能が高く、エアコンをつければ気温40度のなかでも20度を維持し、真冬には小さな小型のファンヒーター一台で汗ばむほどに暖まる。
また、耐用年数は20年を超えるため、復旧、復興が進んだ後はまちのコミュニティセンターやグランピング施設などに転用可能だ。台所、トイレ、風呂も備えた仮設住宅も必要だろうが、入居できるようになるまで発災から数カ月を要すること、1軒あたり1700万円(能登での実績)の税金が投入されることを考えると、インスタントハウスは避難所と仮設住宅の間に生まれる空白を埋める存在になり得るのではないだろうか?
被災者のニーズは大きい。今回の地震で被災した氷川町と宇城市、宇土市だけですでに200軒以上の設置依頼があり、先述の通り新たに八代市でも設置希望者が相次いでいる。
防災先進国・イタリアが注目する「移動する家」
北川さんは、インスタントハウスの可能性をさらに拡げるため、改良を進めている。すでに実用化されているのが、「インスタントハウス モバイル」。これは3トントラックの荷台にぴったり収まるよう設計された長方形のインスタントハウスだ。
そのままトレーラーハウスやキャンピングカーとして利用できるほか、大人3、4人で荷下ろし可能で、目的地で固定すれば従来のインスタントハウスと同じ機能を発揮する。床面積は約8平米と狭いものの、トラックでどこにでも輸送できるのが特徴だ。
「去年9月、イタリアに呼ばれました。ネットでインスタントハウス モバイルのことを知ったという政府の人は、トラックに薬と水を載せて現地で下ろせば薬局になるねと言われました。イタリアは災害が発生するとキッチンカーを出して、被災地で温かい食事やワインを提供することで知られる防災先進国なので、注目してくれて嬉しかったですね」
例えば、地方の町で地震が起きた時、県庁所在地などで「インスタントハウス モバイル」を備蓄していれば、イタリア政府が想定するように、被災地までトラックで運んで臨時の診療所や薬局などにすることができる。撤去も簡単で、トラックに載せればまた別の場所に移動できる。もちろん住居としても使用可能で、汎用性が高い。



