中国人が手放せない一攫千金の幻想
海花島から見て本島に当たる海南島でも、非常によく似た開発の行き詰まりが過去に起きている。1993年、中国を襲った最初の不動産危機の舞台が、まさにこの島だった。
北方からの移住者を当て込んだ建設ブームが起きたが、中国政府が金融引き締めに転じると価格は暴落し、省都・海口では開発業者の95%が倒産した。フィナンシャル・タイムズは同島を「中国不動産危機の縮図」と評した。政策変更から開発停止に至るまで、一連の流れは今回とまったく同じだ。
それでも「造れば人はやってくる」という発想は、放棄された海花島で今なお根強い。市政府も、恒大の当初構想をほぼそのまま引き継ぎ、島を「唯一無二のライフスタイル・コンセプト」と銘打って観光客や住宅の購入希望者に売り込んでいる。
同じ発想は、買い手の側にもある。中国北部・河北省出身で銀行員を退職したワン・シエン氏は、恒大の創業者については、「行き過ぎたし、自分は何でもできると思っていた」と認める。一方で、今後10年で約3億人の中国人が定年退職を迎え、その多くが日当たりがよく安全な土地での暮らしを求めるはずだとも持論を展開。「そのうち1パーセントでもここに来れば、この場所は大成功する」と、海花島の再興を夢見る。
開発業者も、値上がりによる含み益を当て込む購入者側も、そして地方政府でさえも、不動産で一気に富を掴むという幻想を、いまだ手放そうとはしない。


