保険者データによる大規模な医療ビジネス
新薬開発の効率化を目指す製薬業界からは、武田薬品工業、塩野義製薬。データの収集と解析を狙うテック・インフラ業界からは、富士通にNTT、JMDC(旧・日本医療データセンター)にTOPPANなど。健康リスクと保険料を連動させたい保険・金融業界からは、日本生命に明治安田生命、東京海上日動。
2026年1月には、富士通JapanとJMDCが約2000万人規模の保険者データを使って、大規模な医療データビジネスを開始した。
個人データから健康状態を予測して、製薬会社や政府に提供する仕組みが、私たちの知らないうちに、着々とつくられているのだ。
2024年から2026年にかけては、日本製薬工業協会の強い要請によって、患者の同意なしでも匿名加工した個人の医療データを利用できるようにする法改正が進められている。
改正されれば、治験だけでは得られない、国民のリアルな日常データを、業界が安く大量に手に入れられるようになるだろう。
「待ってました」と登場する保険会社
製薬、金融、保険にテック。こうした業界が熱い視線を注ぎ、積極的に政府に働きかけるのは、今までは医師会の反対などによって守られていた個人の医療データ市場が、すでに約1100億円を突破し、爆発的に成長しているからだ。
PHRサービス事業協会という名の「データの採掘業者」たちは、私たちが1歩歩くごとに、心臓が1回鼓動するごとに、その振動を電子データに変え、マーケットに並べている。
アップルの「ヘルスケア」やグーグルの「Google Fit」などの健康アプリと国民のマイナンバーが紐付けられると、待ってましたとばかりに登場するのは、民間の保険会社だ。
住友生命の健康増進型保険「Vitality」は、個人のPHRデータを見て、運動や健康診断など健康増進への取り組みが多い加入者は保険料を最大30%割引き、逆に取り組みが悪ければ保険料が引き上げられる。
政府や企業からは、期待の声が寄せられている。
〈健康管理の努力と引き換えに、保険料の値引きを受けるのは当然の権利だ〉
〈国民が、食事や睡眠や運動に気を使うモチベーションが上がる良い制度〉
〈年々国家財政を圧迫する医療費を下げるためには、やむをえない〉
だが本当にそうだろうか?

