被災者が被災者を支援する
では、具体的にどんな災害関連死対策をしているのか。私の質問に対し、彼女は再びまくし立て、指折り数えるように列挙した。
「避難所では水分の補給や体操の呼びかけ、段ボールベッドの導入。ほかにも、弾性ストッキングの配布、在宅被災者の見守り……すべてやっています!」
その言葉に災害関連死を防ぐ難しさが滲んでいるように思えた。
支援グループの人数は7、8人。その人数で、約40人から60人が身を寄せる避難所を運営し、さらには近隣の在宅被災者のサポートを行っていたのだ。
災害関連死には、ひとつとして同じ死はない。死に至るプロセスも、それぞれ違う。災害関連死を一括して防ぐ特効薬はない。
彼女が指摘したように段ボールベッドの導入による避難所の環境改善や、エコノミークラス症候群を防ぐ弾性ストッキングの配布などは災害関連死を防ぐ有効な支援だ。けれども、あくまでもそれは災害関連死を防ぐ取り組みのひとつだ。
だからこそ、個々の被災者のニーズや災害の性質に合わせたきめ細やかな支援が不可欠なのだが、マンパワーが圧倒的に不足している。
一般的に避難所は、市町村の職員、その施設管理者、避難者自身らが協力して運営する。避難者はもちろん市町村の職員も、施設の管理者も被災者である場合が多い。
被災者が被災者を支援する。発災直後はともかく、災害関連死ゼロを目指すのなら、その体制を抜本的に変えなければならない。
日本とはまったく違うイタリアの災害支援
被災自治体と被災者自身に支援や自助の負担を負わせる仕組みではなく、被災地外から専門的な人員を送り込む仕組みが必要なのではないか。
モデルとして知られるのが、イタリアの災害支援である。
イタリアでは、政府の市民保護庁から指令があると、州の市民保護局が72時間以内に被災地で避難所を設置する義務があるという。
日本と違うのは、避難所を設置するのは被災自治体ではなく、その周辺自治体であるという点だ。今回の熊本地震で言えば、福岡県や大分県、佐賀県などが支援を担うことになるのだろう。
イタリアで避難所となるのは、広い公園などに設置された大型テントだ。家族ごとに入れるエアコン付きのテントである。食堂用のテントでは、ボランティアが温かな食事の配膳を担当する。テント村には、コンテナ式のトイレや、キッチンカーが配備され、なかにはコインランドリースペースが設けられた避難所もあったという。
イタリアの支援について調査した水谷嘉浩氏にインタビューしたことがある。避難所・避難生活学会代表理事を務める水谷氏は、大阪・八尾市で段ボールメーカーを経営しており、避難所で利用される段ボールベッドの考案者でもある

