在庫を多く抱えているからこそのリスク
しかし、ヴィレッジヴァンガードはさらに大きな問題を抱えています。2025年5月期時点におけるB/Sの全体像は図表6の通りです。
企業の安全性でとりわけ短期の観点で重要なのは流動比率です。流動比率は短期の資金繰りを見る指標で、流動資産÷流動負債で計算されます。流動比率が100%の場合は、ざっくり1年以内に現金化できる資産と1年以内に支払いが発生する負債の割合が同じことを意味します。150%の流動比率であれば、安全性はある程度高いと考えるのが一般的です。
ではヴィレッジヴァンガードの流動比率はどうかというと、194%です。これだけ見れば安全性は高いと言えます。
しかしながら、問題は「流動資産の質」です。
図表7は、流動資産154億円の内訳です。その7割以上は商品となっていて、金額は113億円にのぼります。一方、現金及び預金は流動資産の13%しかなく、金額にして21億円ほどです。
これに対して、流動負債は全部で79億円あり、その主たる中身は買掛金27億円、1年以内返済予定の長期借入金27.5億円となっています。これで見ると、商品は100億円以上あるものの、現預金は20億円しかなく、資金繰りは決して余裕があるとはいえません。
安全性をより厳密に見る指標に当座比率があります。序章でも解説したようにこの当座比率は、現預金や売掛金など換金性が高い当座資産を流動負債で割った指標です。ヴィレッジヴァンガードのこの値は50%です。
つまり、換金性の高い資産の倍の流動負債(1年以内に支払いが発生する負債)を抱えています。このように流動比率は高いものの、当座比率が低いのは、商品という在庫を多く抱えているからです。
そしてこの商品の多さこそが実は、ヴィレッジヴァンガードにとってはアキレス腱なのです。
そのことを理解するためにも、ヴィレッジヴァンガードのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle、以下、CCC)について見ていきましょう。
CCCの仕組み
CCCとは、事業活動を通じて仕入れから販売、現金回収に至るまでの日数を見る指標です。事業活動においては、なるべく早くキャッシュ化できた方が資金繰りは楽になりますから、CCCは短い方が望ましいとされます。
CCCの理解を深めるためにもビジネスのプロセスからCCCを捉えてみましょう。多くのビジネスでは、まずは仕入れ代金の支払いが発生し、その後で売れた製品・サービスの売掛金を回収します(図表8)。
一般的に、CCCはプラスの値になるケースがほとんどです。まずは仕入れ代金の支払いが発生し、その後で売れた製品・サービスの売掛金が回収できる、という流れになるためです。
CCCがプラスということは、仕入れから入金までの期間に資金の不足が生じるため、その間の運転資金が必要になることを意味します。
たとえば、商品を仕入れて売れるまでに平均で2カ月(60日)かかるとします。この2カ月はいわゆる在庫として保管している期間です。
そして、売れてから資金を回収するまで平均で15日かかるとします。ここでは現預金だけでなく、クレジットカードの支払いも想定していることから売れてもすぐに入金できない状況を想定します。つまり、商品を仕入れてから入金までは平均で75日かかることになります。
他方、仕入れた商品の支払いは30日後だとします。すると、商品を仕入れてから30日後に支払いが発生する一方で、入金があるまでは75日(棚卸資産回転日数60日+売上債権回転日数15日)あることから、75日−30日=45日間の資金ギャップが存在してしまいます。これがCCCの意味するところです(図表9)。
つまり、CCCが短くなればなるほど、資金ギャップはなくなるということです。




