黒字転換も続く苦境
まずは過去10年間のヴィレッジヴァンガードの売上高と営業利益の推移を確認してみましょう(図表1)。
過去最高の467億円の売上高を達成した2016年5月期から、8年連続で減収となっています。直近の2025年5月期の売上は微増だったものの、基本的には厳しい状況がうかがえます。
売上高がここまで減少している大きな理由の一つは店舗数の減少です。最盛期には500店舗以上あったヴィレッジヴァンガードですが、直近の2025年5月期には293店舗まで減少しています(図表2)。
ヴィレッジヴァンガードの2025年5月期時点の売上の構成を確認してみると、92%が店舗事業の稼ぎです。残りを占めているのは4.6%のPOPUP事業と3.5%のオンライン事業で、割合としては決して大きくありません(ヴィレッジヴァンガード 2025年5月期決算説明資料 事業別売上構成比より)。
そのため、売上の9割以上を占める店舗事業において、これだけ店舗数が減ってしまうと売上高も当然下落します。
ヴィレッジヴァンガードの店舗数の減少を余儀なくされた理由の一つとして、本やDVDが売れなくなったことに加えて、消費者の好みの変化が考えられます。
とりわけインターネットやスマートフォンが普及する中、SNSマーケティングに代表されるように、ネットを通じた消費行動が増えてきました。そうした中、サブカルを得意としてきたヴィレッジヴァンガードは、嗜好の移り変わりが激しい昨今の消費者の行動変化にうまく対応できなかったと言えます。
では、次に売上高を店舗数で割った店舗あたり売上高推移はどうでしょうか。
“面白い商品”が生んだ30億超の特別損失
図表3をご覧ください。コロナ前の2019年5月期には店舗あたりの売上高は9,000万円以上あったものの、2023年5月期までは8,000万円を下回る状況が続いていました。直近では、不採算店舗の整理の甲斐あってか、8,200万円を超えるまで回復しています。なお、店舗あたりの売上高に関して、売上については決算説明資料に記載されている連結直営売上の店舗事業の数字を、店舗数については有価証券報告書に記載されている各期末と前期末の直営店舗の平均を用いて計算しています。
店舗数は減少しているものの、直近では店舗あたりの売上高は伸びていますし、直近の売上高全体で前期比微増している点から多少の回復の兆しが見えます。
しかしながら、課題は売上の減少よりも利益面にあります。直近の営業利益は2期連続で9億円以上の営業損失となっていて厳しい状況が続いているからです。
また、2025年5月期の最終赤字は42億円でした。ただし、営業損益ベースでは9.3億円の赤字にとどまっています。両者の差は30億円以上。このギャップを生んだのは、特別損失の計上です。具体的には、棚卸資産評価損24.7億円と減損損失6.7億円が計上されたのです。
棚卸資産評価損は、「売れると思って仕入れた面白い商品」の在庫が実際にはなかなか売れず価値を損なったために計上した損失、とイメージするとわかりやすいでしょう。また、減損損失は店舗の閉店に伴い価値を失った資産を減損したものです。
このような特別損失を30億円以上計上したために、最終赤字が42億円にもなったのです。ただ、これら特別損失は一時的な損失の計上であり、これらの損失でキャッシュが減るわけでもありません。
とはいえ、営業利益ベースで見てもこの10年間ではヴィレッジヴァンガードは利益をあまり出せていない状況です。



