こうした結果から研究チームは、睡眠が遺伝的リスクの調整役として機能しており、アルツハイマー病に伴う脳の変化が時間の経過とともにどう進むかに影響を与えているとみられると結論づけた。
ショウォルターは、今回の研究結果は循環器疾患ですでに観察されているパターンによく似ていると語る。遺伝子とライフスタイル要因はそれぞれ独立して働くのではなく、互いに影響を及ぼし合っているのだ。
「遺伝子がリスクを左右することはあっても、そのリスクが実際にどう現れるかを決めるのは、行動や環境であることが多い」
「今回の研究により、特定のAQP4変異を持つ人は、睡眠時間が短いと申告した場合に灰白質の減少がより早く進むことが示された」と、共同研究著者のアイシャ・ミリガン・アームストロングは述べている。「どんな遺伝子を持っているかだけでなく、その遺伝子が自分を取り巻く環境とどう相互作用しているかが重要なのだ」
ただし、研究チームは今回の結果を過剰に解釈しないよう注意を促している。
「今すぐ遺伝子検査を推奨する段階にはない」と、共同研究著者のテニエル・ポーターは述べ、今回の研究結果について、より規模が大きく多様な被験者グループを対象に再現性を確認する必要があると指摘する。
ポーターによれば、今回の研究が真に示しているのは、アルツハイマー病のリスクが高まるメカニズムは人によって異なる可能性があるということであり、将来的にはより個人に合った予防策が可能になるという点だ。
この慎重な姿勢には、認知症評価と神経変性疾患を専門とする神経心理学者のジェシカ・マッカーシーも同意する。彼女は、この研究でまず重要なのは遺伝学的な側面よりも、むしろ睡眠について語られている点にあると話す。
「この研究が、睡眠のような『自分自身の努力で変えられるリスク要因』を、初期段階から積極的に把握し、対策を講じることの重要性を示していることを決して無視してはならない」とマッカーシーは言う。
今回の研究結果は、睡眠を改善すればアルツハイマー病を予防できると証明したわけではなく、AQP4の遺伝子変異が認知機能低下を直接引き起こすことを立証したわけでもない。
しかし、睡眠が長期的な脳の健康を左右する最も重要で、かつ「自らアプローチ可能な」要因の1つであるというこれまでの研究結果をさらに裏付けるものだ。そして同時に、睡眠がもたらす効果は個人の遺伝的な体質によって異なる可能性があることも示している。


