アルツハイマー病に関連する遺伝子変異を持っている人にとって、日頃の睡眠時間はこれまで考えられていた以上に重要な意味を持つかもしれない。遺伝子と睡眠習慣が互いに影響し合い、症状が現れる何年も前から脳の変化を左右している可能性があることが、新たな研究結果で示された。
オーストラリアのエディスコーワン大学の研究チームは、「アクアポリン4(AQP4)」と呼ばれる遺伝子に注目した。この遺伝子は脳内の水分移動を調節するもので、睡眠中に脳の老廃物を排出するシステム(一般に「グリンパティックシステム」と呼ばれる)で重要な役割を担っている。
このシステムは、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβなどのタンパク質の除去に寄与していると考えられている。老廃物の排出システムは睡眠中に最も活発になるため、睡眠の質が将来の認知症リスクに影響を与えるかどうかに、近年注目が高まっている。
認知症と認知機能障害を専門とする医師のジョン・ショウォルターは、睡眠とアルツハイマー病の生物学的なつながりを支持する一人だ。
「睡眠と、アルツハイマー病を含むあらゆる原因による認知機能障害との間に強い結びつきがあることは、すでに分かっている」とショウォルターは述べる。「たとえば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群はあらゆる原因による認知症のリスクを34%高め、不眠症はリスクを13〜53%も高めるという報告がある」
今回の研究は、一部の遺伝的リスクが日頃の睡眠習慣によって増幅されることもあれば、逆に和らげられる可能性もあることを示唆している。将来的に、個人の生物学的な特徴に合わせた予防策の構築につながるかもしれない。
学術誌『アルツハイマー病と認知症』の2026年6月号に掲載された今回の研究は、すでにアミロイドβの蓄積が確認されているものの、認知機能は正常な70代半ばの男女351人を対象に実施された。
研究チームは、AQP4遺伝子に見られる代表的な13種類の変異を調べ、自己申告による睡眠データ、脳画像、認知機能テストの指標と比較分析した。その結果、特定の遺伝子変異を持つ人々において、脳の体積、萎縮の進行、認知パフォーマンスに違いが見られ、こうした関連性は、睡眠時間や睡眠の質、入眠にかかる時間によって変化することが判明した。
一部の変異を持つ被験者では、睡眠時間が短いと申告した人ほど、脳の灰白質の減少スピードが速かった。また、寝付くまでに時間がかかる一部の被験者では、脳体積の減少につながる構造的な変化が見られた。睡眠障害と遺伝的プロファイルの組み合わせによって、その後の認知機能の変化のパターンにも違いが生じていた。

